あけましておめでとうございます。横浜院長の柏です。本年もよろしくお願いいたします。本日1月3日は、長男次男を連れてそごうのスターウォーズ展から映画「スターウォーズ/フォースの覚醒」とはしごしました。いやあ、スターウォーズ展もすごくよかったけど、映画も昔から変わらぬスターウォーズの魂が生きていて感動しました。思えば第1作は私が中3の時でして、友達とぐんまから東京まで出てきて見たのを覚えております。当時の字幕は「フォース」ではなく「理力」と訳していたことを思い出しました。
さて、年の初めに何を書くか、毎年悩ましいところなのですが、今年は昨年10月18日に放映された、NHKスペシャル アジア巨大遺跡第2集「ミャンマー バガン遺跡」を見て思ったことを書くこととします。去年見たテレビの中で私が一番印象に残ったのがこれなのですが、皆さんご覧になりましたか?
1000年ほど前に栄えたミャンマー初の統一王朝、バガン。今でもその都のあった地には3000もの仏塔、寺院が林立し壮観なたたずまいを見せる。ボロブドゥールをも凌ぐと思われるこの仏教遺跡はどうやって作られたのか。そこには上座部仏教(私の頃は「小乗仏教」と教わったものですね)の教えを基にした、おそるべき社会のシステムがあったというのです。まず、権力者たる王自身が、熱心な上座部仏教信者であり、「功徳(くどく)」を積むことをその目的とします。功徳とは、大辞泉では「現世・来世に幸福をもたらすもとになる善行。善根。」とあります。そして王は仏塔、寺院を積極的に建立します。それが彼にとっては功徳になるからです。それには税金が充てられるわけですが、王は建設にあたる労働者に十分な賃金を支払います。そのことが功徳でもあるのです。こうして富の再分配が行われ、さらに大衆の中で豊かになった者は自らの功徳のために仏塔の建立を行い、労働者に賃金を払います。その結果、貧富の差のない社会が形成されたといいます。ここで見られる価値観は、資本主義とは異なるものです。我々の資本主義の世界では、富を蓄えることがその目的となってしまい、いくらゲイツやザッカーバーグが寄附をしたところで貧富の差は明らかです。実験的に生まれた共産主義はシステムとして破綻しましたが、1000年も昔にこうしたシステムを確立した当時のミャンマー人の卓見には感動すら覚えます。バガンは元(げん)の侵攻により滅ぼされてしまうのですが、現在もこうした精神はバガンに暮らす人々の間に生き続けており、平等な社会が維持されているといいます。
以前No.068で、これもNHKスペシャルからのお話しとして、平等に生きるアフリカ・ハッザの人々にはうつ病が見られないことを書きました。当時の、そして現在のバガンの人々にうつ病は見られるのか。功徳〜利他〜平等〜うつ病のない社会・・・いろいろと考えさせられる番組でした。
日本人には古来いろいろな信仰がありますが、日本人は歴史的にも、メンタリティーとしては仏教への親和性が高い民族だと思います。上座部仏教と大乗仏教の違いがあるとはいえ、最澄は比叡山で忘己利他(もうこりた)と利他の心を説き(かつて滋賀に住んでたので何となく親近感)、その後もこの精神は生き続けているでしょう。世界情勢がきな臭くなってきていますが、中東の問題はキリスト教とイスラム教との宗教戦争という一面は否定できません。イエス自身、利他の心を説いていた人物でありますが、一神教はそれが他の否定という形をとった場合、本来の教えを離れ危険な方向に向かうリスクを伴います(誤解があるといけませんが、私自身今は無宗教ですがかつてキリスト教の幼稚園で学び、今もキリスト者の知り合いも多くおり、一神教を否定するものでは全くありません)。新たな帝国主義的な動きが見える世界で、「功徳」の考え方を中心とした仏教的なもの、東洋的なものが今後の世界にとって大事なキーワードになるように思いますし、ここに日本人として果たすべき役割もあるのではないでしょうか。こうした心の持ち方は、同時にうつ病を減らすことにもつながるとも思うわけです。
私は子どもの頃から遺跡ファンでして、「未来への遺産」からはじまってテレビの遺跡シリーズはいろいろ見ておりました。音楽もいいものがそろっておりまして、今日の一曲はバガン=東洋の遺跡ということでNHKの「シルクロード 絲綢の路」から「シルクロード幻想〜光と影〜」をどうぞ。喜多郎のシンセサイザーが素敵です。テーマ曲はこちらですが、私はこの曲の方が好きなのでこちらを紹介いたします。
コメント
こんにちは、柏先生(^。^)
柏先生は医療を通じて、患者の皆さんの心と身体を癒し、善根を積まれる薬王菩薩ですね。
仏法的に言わせていただくと、自分だけでなく、他者をも救い幸せな境涯を開きゆく、仏の境涯ですね。