横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.059 双極スペクトラム その4

横浜院長の柏です。脱線が続きました。今日はガミーの話に戻りましょう。前回、ガミーの提唱する双極スペクトラム障害(BSD)についてお話ししました。ガミーは、このBSDを含めた感情障害全体を感情障害スペクトラムとして下記のように記述しています。
hitori59-a.jpgHow much bipolarity? という視点から言うと、右に行くほどbipolarity(双極性)が高い、ということになるでしょう。これは、かつてよりの単極か?双極か?といった二分法の議論をより精緻化したものとして意義があり、感情障害スペクトラム間での移行の可能性をも示したものと考えます。うつ病についてはもう少しあとで詳しくお話しする予定ですが、このようにうつ病の中でもいろいろなタイプがあり、スペクトラムを成しているのです。
さらには、この図の外側には不安障害、精神病性障害(統合失調症など)が置かれ、「精神疾患スペクトラム」とも呼ぶべき大きな図ができます。どんどんスペクトラムが大きくなっていくのですが、それはあながち意味のないことでもありません。
治療薬の面から見ると、最近の新薬はたとえばSSRIは感情障害のみならず不安障害に高い効果を示し、また非定型抗精神病薬は統合失調症の薬として開発されましたが最近では双極性障害やうつ病にも保険適応がおりるなど、分類の壁を越えて効果を発揮します。また、遺伝子研究からも統合失調症と双極性障害、それぞれの遺伝子研究の結果から同じ遺伝子の変異が確認されてきているなど、これまで別々の病気と考えられてきた精神疾患の間に関連性、連続性が示されつつあるのです。かつて「単一精神病論」という考え方があり、最近ではそれは古い考え方とされていましたが、案外ツボをついているのかも知れません。
診察室に立ち返って考えてみると、診断学は大切で、ここをはずして治療は始まりませんが、分類学になってしまっては意味がありません。大きなスペクトラムの中でそれぞれの方がどのような位置にあるのか、よくよく考えてオーダーメイドの治療を組み立てていくことが治療者に求められていることだと思っています。
どうもここ数回はすっかり難しい話になってしまいましたね。次回以降はもっと日常的な話にしていきたいと思います。ではまた。

コメント

  1. 隊長 より:

    治療薬が自分に合っているのか?
    よく疑問に思います。
    なるほど、統合失調の治療薬が活躍できるということもアリなんですね。
    自分の健康への道筋が少しずつ見えてくるかな。

  2. 横浜院長 より:

    隊長さん
    スペクトラム=多様性ですから、既成概念にとらわれない治療も大切です。
    統合失調症の薬、うつ病の薬、とあまりに固定化した考え方では幅が狭くなります。それぞれの方の脳内神経伝達のバランスをどう修復するか、が大切です。
    もちろん、多剤併用を勧めるものではなく、保険診療の問題もありますので慎重さが必要なことは言うまでもありませんが。