横浜院長の柏です。はじめにお詫びです。水曜夜、会議で座長を務めている途中から体調を崩し、木曜の外来をお休みしてしまいました。記憶を遡っても、入院以外で外来に穴を開けたのは、少なくとも当院では初めてだし、その前も記憶がありません。大学でも、外来がない日に休んだことはありますが、外来日には熱があろうが下痢していようが診療にあたっておりました。今回は水曜夜、立つだけで血の気が引く感じがあったことから大事をとりました。ご迷惑をおかけした木曜の患者さんたちには謹んでお詫び申し上げます。また、代わりに診察に当たっていただいた二人のN先生にも御礼申し上げます。金曜から復帰しており、週末はゆっくり休んで月曜に備えたいと思っております。年ですねぇ☆
そろそろ気分障害シリーズに入ろうと思っているのですが、あまりに大きなテーマでどう入ろうかと悩んでいるうちに、なぜか新聞記事シリーズになっております(^_^; 今日は、朝日新聞木曜朝刊に載っていたこの記事です。「通わぬ心、結婚17年目の診断 アスペルガーの夫持つ妻語る」
アスペルガー症候群をはじめ発達障害と呼ばれる方々は、脳の発達の様式が定型発達(つまり発達障害以外)の方々と異なっており、きわめて高い能力を示すことがある反面、特に他人の心理をくみ取ることが苦手であることがままあります。職場の同僚であれば、「変わった人」で立場を得ることができることも多いのですが、家族となるとそうもいかないことが出てきます。苦しい時は悲しみ合い助け合い、楽しい時は笑い合い、家事や育児を協力して回し、子供の成長を喜び合う。こうした定型発達ではごく自然に見られる家族内関係が、発達障害の夫(妻)には難しいことがあるわけです。自閉症の子供に見られるのと同質の「打っても響かない」独特の感じが夫婦間、家族間で見られるのです。当のご本人は問題を感じておらず、配偶者やお子さんが困ってしまうことが多いのが特徴です。
当院で私が関わったケースでも、うつ病や適応障害などで受診された方で、よくよくお話を伺ってみるとご家族の言動に首を傾げざるを得ないことが多く、そのご家族にご来院いただくと実は発達障害の可能性が濃厚、という場面を何度も経験しています。さらにご主人のみならずお子様も発達障害を抱えてらっしゃるようなケースもあります。このような場合、まずはうつ病や適応障害を抱えているご本人に対して十分な加療を行います。その上で、発達障害が疑われるご家族の特徴を抽出し、対応法を一緒に考えるとともに、必要に応じてご家族を受診につなげるための方法もあわせて考えていくことになります。
記事で元師匠の加藤進昌先生も書かれていますが、当院でも最近、ご家族が発達障害ではないか、というご相談で初診にいらっしゃる方が増えてきています。当院の経験では、ご本人からいらっしゃる場合に比べて、この場合は実際に発達障害である確率は低くはなるようで、実際にそのご家族に来ていただくとパーソナリティ障害、アルコール依存症などの他の病気であったり、時には診断はつかず夫婦間の関係性の問題である場合もあります。いずれにせよ、医学的な視点から夫婦関係、家族関係の改善の一助となるべく努力するのも精神科医の務めだと思っております。お気軽にご相談いただければと存じます。
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