横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.007 NIRS

横浜院長の柏です。
クリニックの医師といえども、最新の医療水準にupdateしていかないと適切な医療は行えません。今回私は、東大病院にてNIRS(near-infrared spectroscopy, 近赤外線スペクトロスコピー)検査について研修させていただいて来ました。
NIRSに関しては、NHKスペシャルなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。近赤外線を利用して脳の血流を測定することにより、疾患の鑑別に役立てようという新しい検査法です。とくにうつ病と躁うつ病(双極性障害)の鑑別、統合失調症の診断において期待されています。
これまで心療内科・精神科疾患の診断は面接でそのほとんどが決まり、心理検査は補助的な役割に過ぎず、血液検査、そして脳波やMRIなどの生理検査はあくまでもてんかんや体の病気などが隠れていないかの除外診断的な意味合いに留まっていました。私が医者になってからも、PET, fMRI, MRSなどの生理的検査法や、ドーパミン代謝物やコルチコステロイドなどの生化学的検査法、遺伝子検査などが研究されてきましたが、どれも現場で診断に使える水準には至っていませんでした。
この中でNIRSは、患者様に痛みや負担をかけることなく簡便に行え、かつ鑑別診断にも一定の効果が期待できそうです。精神疾患の検査法でははじめて先進医療(リンクのNo.44)に認定されており、近い将来皆様にルーチンで受けていただき、診断精度の向上、治療方針のより正しい策定に役立てることができる日が期待されます。
さて、実際に見せていただいたNIRS検査ですが、装置も施行方法も簡便で、結果も今回は素人の私が見てもすぐわかるものでした。見ているものが素質なのか状態なのかなど、まだまだ検討課題も多いですが、将来が楽しみです。
久々に訪れた母校でしたが、精神医学教室の若い先生達にエネルギーをもらって帰ってきました。いよいよ精神医学が学問としてのブレイクスルーを迎える、そんな期待を抱いたよき一日となりました。

コメント

  1. 隊長 より:

    日本では芹香病院が導入している治療法ですね。
    早くハートクリニックでも導入して欲しいです。

  2. 横浜院長 より:

    隊長様
    コメントありがとうございます。
    よく誤解を受けるのですが、NIRSは診断のための検査で、治療には使えません。
    芹香病院で使われているのはrTMS(反復性経頭蓋磁気刺激)ですね。こちらは頭に磁気をあててうつ病などを治療するためのものです。芹香病院の知人によるとNHK放送後すぐに申し込み殺到で予約パンク状態とか。これもまだ研究段階ではありますが、将来が楽しみです。