福祉用語の基礎知識

精神科作業療法

無為好褥の常態にある精神障害者に作業をしてもらうことによって残されている健康な精神活動を賦活し、病的思考から立ち直りを図ろうとする試みは古くから行われて来ました。
作業種目としては農耕、伐採、園芸などの他、木工、手芸あるいは工賃を得られる手内職などが代表的であります。これらの多くは病院内作業と病院外作業とに分けられてきました。
精神科作業療法の目的は、1日のリズムの獲得や週や月の生活リズムを獲得する他、わずかながらも工賃を得る等として勤労意欲を開発すること等がおかれました。その他、作業を通じて共同意識を醸成することや複雑な人間関係を再体験するなど社会へ戻るための訓練的な意味ももっています。なかでも病院外作業では、入院中でありながら朝になると病院外の事業所に通いそこで与えられた仕事をこなして夕方には病院に戻るというような生活をすることによって社会復帰の訓練をしてきたものであります。
病院内作業であれ病院外作業であれ、工賃や賃金が極めて低く設定されていることなどからこうした作業に精神障害者が従事することは搾取を助長することにあたるという考えから、これらは作業療法とはいえないという考えが強くあります。このため一時期は、作業療法は廃れたかにみえたが、精神活動を賦活するという意味や対人関係を改善するという意味から改めて作業療法を考えるようになり、絵画や彫刻あるいは陶芸や染色などの創作活動を作業療法と位置づけるなどして新たな展開を示しています。
作業療法は1974年から診療報酬制度の対象となったため医師の指示の下に作業療法士が行うものについては医療費が算定できるようになっています。