横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.139 うつ病の治療目標

横浜院長の柏です。GWいかがお過ごしですか。先週、スタッフに勧められて「Dr.倫太郎」をはじめて見ました。専門家ですのでネタはすぐにわかりましたが、一番感じたことは・・・「なんて広い診察室なの」でしたね。
さて、前々回のブログでうつ病は「治る病気」だと書きました。この「治る」という意味についてはのちほど別途しっかりとお話しすることとして、今日はそのあとの話をしたいと思います。「うつ病は治る病気であるが、再発することがある」ということ。今日はこの点についてお話しします。
すなわち、うつ病の治療の目標は以下の二つとなります。

1) うつ病を寛解させる
2) うつ病を再発させない

われわれ治療者は、うつ病の方の治療にとりかかる場合、はじめからこの二つのことを考えて治療にあたらなくてはなりません。もちろん、最初は何をおいても寛解導入です。まずは目の前のつらい症状を取って差し上げること。これは当然の務めですね。しかし、はい症状がなくなりました、じゃあもとの生活に戻ります・・・これでいいのでしょうか?
症状はこれまでの生活のSOSであり、うつはこれまでの生活のままではまずいということを教えてくれていたはずです。何かを変えていかないと、再びうつに陥る・・・すなわち、再発する可能性が高くなってしまうと考えるのが自然です。
治療目標2)うつ病を再発させない・・・このために必要なことは、うつ病をひきおこす要因を分析し、それらに対して適切な対策を打つことです。
さて、すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、こうした治療方針は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、慢性疾患と全く同じなのです(うつ病自体、生活習慣病とも言われることもありますし、私もそう思います)。これらの病気は、重症化する前であれば生活習慣を整え、また薬物療法を上手に取り入れることにより日常生活、職業生活に何ら支障のない状態を作ることができます(これが、「治った」という状態なのです)。生活習慣病では、適度な運動、食事内容の見直し、規則的な生活習慣などが療養のカギとなります。連日、夜遅くまで仕事をしてその後飲み歩いているようでは、いくら薬だけのんでもよくなるはずがありませんね。うつ病にしても生活習慣病にしても、生活習慣の何らかの問題から、体が「病気モード」に入ってしまった状態です。それは平衡状態の変化であり、フェアウェイからバンカーに落ちてしまった状態です。ずいぶん前ですが、No.016でご説明していますのでご参照下さいね。しっかりとフェアウェイに戻し、もう一度バンカーに転がり落ちることがないよう、治ったあとも細心の注意が必要なのです。
こう書くと気が重くなる方もあるかと思いますが、寛解してよい状態を保っている方の場合、生き方が楽になった、うつになってよかった、とおっしゃることも多いのですよ。それまでの生き方のままではいずれ破綻していたものを、破綻する前にうつがそれを教えてくれた・・・そんな見方もできると思います。
その意味でうつは意味のあることではありますが、いかんせん大変つらい状態です。うつになった場合目指すべきは、うつでももとの生活でもない、第三の道を見つけ出すことでしょう。そのためには、やりたかったけれども切り落とさなくてはいけないこともあるかも知れません。そうしたことも受け入れ、無理のない、(表現が失礼かも知れませんが、いろいろな意味で)身の丈に合った、そんな生活を日々送っていくこと。我々も、そうしたお手伝いができれば本望です。
では今日の一曲。今日(5/4)はMay the 4th ということでスターウォーズの日らしいですが、Googleのトップページはピアノの発明者であるバルトロメオ・クリストフォリの誕生日の方を取ってますね。渋いです。そっちで流れていた名曲、バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」マイラ・ヘスによるピアノ編曲版を、ワイセンベルクのピアノでどうぞ。

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