最近、まじっく快斗がマイブームの横浜院長・柏です。あ、オタクですから特撮だけじゃなくてアニメももちろん好きですよ。今週の第17話はしっかり社会不安障害の認知行動療法でしたね。
「誰もこころの中には入ってきませんよ」・・・怪盗キッド、名医ですね。
今日は、前回の続きで、「非定型の特徴」を伴ううつ病についてご説明します。いわゆる「非定型うつ病」ってやつですね。これは、うつ病の中でも特殊なタイプですが、より内因性(生物学的)な要素が大きいと考えられているタイプでもあります。DSM-5の定義を見てみましょう。
非定型の特徴を伴う:
A.気分の反応性(すなわち、現実のまたは可能性のある楽しい出来事に反応して気分が明るくなる)
B.以下のうち2つ(またはそれ以上)
1.有意の体重増加または食欲増加
2.過眠
3.鉛様の麻痺(すなわち、手や足の重い、鉛のような感覚)
4.長期間にわたり対人関係の拒絶に敏感(気分障害のエピソードだけに限定されるものでない)で、意味のある社会的または職業的障害を引き起こしている
C. 同一エピソードの間に、「メランコリアの特徴を伴う」 または「緊張病を伴う」の基準を満たさない
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院 より引用)
「楽しい出来事に反応して気分が明るくなる」、これは前回のメランコリアの正反対ですよね。メランコリアがうつ病の中のうつ病とすると、このタイプはちょっと毛色の変わったうつ病・・・これが「非定型うつ病」なわけです。ここで気をつけないといけないのは、このA項目だけに注目してしまうと、じゃあ会社ではうつだが休みは元気な人・・・最近は「新型うつ病」などという怪しい造語もあるようですが・・・はみな非定型うつ病なのか?という議論になってしまうことです。以前にも書きましたが、それは違います。会社は行けないが、休んでいさえすればほとんどうつの症状が見られない、という方は適応障害ではあってもうつ病ではありません。というのも、「非定型の特徴を伴ううつ病」であるためには、上記「非定型の特徴」の基準を満たす前に、そもそもDSMの大うつ病エピソードの診断基準を満たさなくてはなりません。ここには、「ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分(あるいは、興味喜びの減退)」とあるわけでして、うつ病であるためには、楽しいことがあると気分が上がるにしてもそれは一過性で、すぐに元に戻るのでないとこの診断基準を満たすことはできないわけです。
さらには、非定型うつ病であるためには上のB項目も満たす必要があります。こちらも、メランコリーにおける早朝覚醒(不眠)、食欲不振・体重減少にたいして過眠、食欲増加・体重増加とまるで反対方向ですね。この点につきましては、次回に詳しくお話しすることとします。
B-4にある「対人関係の拒絶に敏感」というのは、気分反応性とともに最近の若い方に増えているといわれる心性ではあり、このあたりが「新型」と呼ばれる所以かも知れませんね。
非定型うつ病の治療は一般的なうつ病の治療に準じますが、生物学的には双極性障害により近いとも考えられており、双極性障害の治療が奏功する場合もあります。中でも、生活リズムを整えることはとても大切だと思います。
では今日の一曲。テレビネタばかりで恐縮ですが、今週の題名のない音楽会はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番でした。私の知人にも熱狂的ファンが数名おりますが、超絶技巧の難曲です。個人的には子供の頃からよく聴いていた2番の方が好きですが、3番は3番で素晴らしい曲です。この曲はやはりホロヴィッツが最高です。
コメント
私はまさに非定型うつどっぷりです。年末の忙しさからまた悪くなって年明けから治療が始まりました。人にぶつかられたりするのが嫌で外出したくなくなり、待合室でしゃべっている人がいると声が気になって受診に行くのもとても苦痛です。一か月、薬の調整などを受けていますが、「早くよくなりたい」と心が焦ってしまいます。理屈では分かっているのですが。
非定型うつやうつ病に瞑想が良い効果があると聞いたのですが、本当でしょうか?本当だとして、瞑想とは具体的にどうすればよいのかよくわかりません。座禅などで言う何も考えない状態に心を持っていくのか、心に浮かぶ物事をありのままに受け止めていくのか、どうなのでしょうか?
YouTubeでMoses Brown – School Is Closed
というのがあるから、見てください。ちょっと楽しいです。
こんなユーモアがある校長先生、ナイスです。
B、Cがあてはまらないのかな、と思います。
とすると、僕の病名は何?
自分で自分がわからなくなってるのは辛いですが、先生とじっくり向き合っていい治療法と薬が明日にでも開発される。 を信じて生きていきます。
って、暗い話だな。
ピアニストの超絶技巧、生で聴いた経験がほとんどないので、こういうのを観るとみなとみらいホールへ聴きに行きたくなります。
HPチェックしてみよう!
適応障害。。私のうつ病の入り口も適応障害でした。それだけでも充分苦しかったですが、急性期のうつ病に移行した時の病苦の比ではありませんでしたヽ(´o`;
適応障害が高じ、更に拗れてホンモノのうつ病患者になった自分でしたが、うつ病の病苦はいつでもどんな場所に居ても、気分が悪く、心身の緊張も解けることもなくて、“無間地獄”という言葉が頻繁に頭をよぎりました…>_<…
自分は過眠だけが、非定型のリストの項目に当てはまりましたが、毎日の早朝覚醒の恐怖と、それに伴う頻脈、心身の極端な緊張にはトコトン苦しみました(−_−;)毎日、朝が来るのが心底恐ろしかったですね_| ̄|○
まねきねこさん
非定型の方の場合、日照時間の短い冬はしんどい方が多いみたいです。
瞑想については私はよくわかりませんが、最近、仏教に関する書物を数冊読みました。一神教のイスラム、キリスト教が争いを好む中、仏教的な考え方は社会の平和、個人のこころの平和に役立つように思えます。まだ診療に取り入れる段階ではないですが、もっと勉強してみようと思っています。
Anonumousさん
ニュースで紹介されていて、私も見ましたよ。日本でもこれくらいのユーモアがほしいですねぇ。
隊長さん
まあ、自己診断に走らず、じっくりやっていきましょうね。みなとみらいホールは結構一流どころが来ますので、ぜひお出かけ下さいね。