横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.115  ダムとオーバーヒート

横浜院長の柏です。今日も質問から入りましょうか・・・「うつ病とはどういう病気ですか」・・・いかがお答えになりますか。
いろいろな答えがありえますよね。DSM-5の診断基準によると・・・ということもできますし、哲学的に語ることも可能でしょう。
私は、「エネルギーが低下する病気」と答えたいと思います。もう少し詳しく言うと、「エネルギーが低下して自力では元に戻せない状態」ということでしょうか。ここでいうエネルギーとは、生命エネルギーといいますか、「脳が本来持っている、人間として生きていくための力」みたいなものです。前回お話ししたように、このエネルギーが低下した状態が2週間以上続くと、脳はうつ病を発症し自力で戻しにくくなります。
私は、よくたとえ話を使います。うつ病に関してよく使うのが次の二つです。
hitori115-a.jpgまずはダムです。ダムは水を蓄え、下流で水が必要なときや水力発電が必要なときに放流します。しかし、猛暑の夏など上流で雨が降らない日が続くと、ダムの水は枯渇します。今年はなかったようですが、四国の早明浦ダムなどでよく起こりますね。こうなると、給水制限をして、水力発電はあきらめて、上流に雨が降りダム湖に水がたまるのを待つしかありません。


hitori115-b.jpgもう一つは車のオーバーヒートです。今時の車はオーバーヒートなんてなかなか起こしませんから、知らない方もあるかも知れませんね。エンジンに無理な負荷をかけ続けると(古い車で、エアコンがんがんかけて山道をのぼるとか)エンジン温度が極端に上がり、エンジンが働かなくなります。この時は水をかけてもだめで、路肩に車を止め、ボンネットをあけてエンジンが冷えるまでまつしかありません。
いずれも、エネルギーが下がってしまった状態のよい例えですね。共通することは、回復するには時間が必要だと言うことです。うつ病も同じですね。エネルギーを回復させるには、十分な時間、十分な休養が必要です。
うつ病は、治療に反応するまでに1週間から1ヶ月、寛解(負担のない生活では症状が出ない)まで3ヶ月、回復(もとの生活でも症状が出ない)には1年かかる病気です。エネルギーが下がったときは、無理矢理持ち上げるのではなく、時間をかけて回復を待つ姿勢が大切です。エネルギーが低下するとはどういうことなのか、次回はそこをもう少し考えてみましょう。
前回、ブラームスの弦楽六重奏をご紹介しました。この曲はブラームス自身によるピアノ編曲版(「主題と変奏」op.18)もありますので、そちらもご紹介しましょう。この曲も、かつてサンハート(だったよな・・・)で弾きましたね。そろそろピアノも再開したいなぁ・・・って時間が(泣)。本当はルプーの演奏がお気に入りですが、YouTubeにあったツィメルマンの演奏でどうぞ。

コメント

  1. 左から3番目のしろたん より:

    とっても的確なたとえですね!
    やはり先生の外来でのご経験の実績なのでしょう!(*^_^*)
    ストレスがたまるという面からみると、
    ダムでは放水できない状態、エンジンではオイルがうまく回らない状態といえるかもしれません。
    P.S 「左から」→自分から見て左から物を並べるのが好きだから・「3番目」→今使っているしろたんが3匹目だから  です。

  2. まねきねこ より:

    台風が接近している低気圧のせいか、何だかつまらないことにとらわれて悔しいとか怒りとかげんなりするとか、ちょっと不調を感じています。気温の乱高下は体にきついというより精神的に負荷を感じます。うつを初めて発病した時は典型的かつ古典的なうつだったのですが、最近は非定型うつがぴったりで困ってしまいます。週末、女優の音無美紀子さんの体験談の番組で出演していた女性の精神科医は「新型うつなんてないんです」とおっしゃっていました。私はこの考え方を以前から支持してきました。新型と言うと突然変異みたいで、それはウイルス学的にはあり得ますが、うつ病のような精神医学では未知のことが表に出てきたということで、今までのような閉鎖的な精神医療の雰囲気だったら新型うつと呼ばれている人たちは医療機関にかからなかったと思います。精神科や心療内科が身近になってきたから今まで不調を我慢していた人たちも受診するようになった結果、わかってきたのだと思います。それにしても非定型うつもエネルギーが低下しているのでしょうか?私は何も嫌なことがなければスポーツクラブにも通って、結構激しいアクションのプログラムにも参加していますが、何か(健常者から見るとつまらないこと)で落ち込んだりすると急に力がなくなって、よれよれになってしまいます。今、抗うつ剤は飲んでいないのですが、抗うつ剤を飲んだ方が気分が安定するのでしょうか?パキシルは長く飲み続けると興奮したり突発的に自殺を思い立ったりする副作用がありますが、サインバルタなどは大丈夫そうな気もするのですが。それとも期間を限定してなら抗不安剤もありですかね?私は服薬に抵抗がない人なので、気分が落ち着いて暮らせるようになるならそれが一番だと考えています。

  3. 横浜院長 より:

    しろたんさん(この場合、さんは余計かな?)
    うまい例えですね!使わせていただきます。ごちそうさま。
    まねきねこさん
    台風続きで、ここのところ気象病症状の方も多いですね。
    http://www.heart-clinic.net/square/site-yokohama/no045.html
    非定型うつも、やはりうつですからエネルギーの低下です。
    抗うつ薬がよいのか他のものがよいのか、このあたりは専門的な判断になりますので
    主治医ときちんとご相談下さいね。

  4. 横浜院長 より:

    NOTICE!
    時間がないので、この場を借りてご紹介。
    TVシンポジウム「うつ病と躁(そう)うつ病を語る~自分らしく生きるために~」
    https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20141018-31-18538
    10月18日(土)午後2時〜3時 Eテレ
    加藤忠史先生、大野裕先生が出られるようです。皆さんもどうぞご覧下さい。

  5. 左から3番目のしろたん より:

    録画して見ます!
    私自身、うつ状態になると、なぜか落ち着かず不愉快なもので満たされてゆくのを感じますので…。褒めていただきありがとうございます!
    あと、しろたんと私は、別者なので、「さん」つきでお願いします。

  6. mos-mos より:

    おっと!!私も予約録画します!
    それにしても、先日の「種の起源」もそうでしたが、どうしていつも突然なのでしょうか、笑。
    主に「特集番組」として取り上げられる類のテーマなので仕方がないのでしょうが、うっかり見逃してしまいそうです。
    大野先生といえば、日本経済新聞で先生のコラムが掲載されていて、いつも愛読しています。
    毎週、金曜日の…確か夕刊だったと思います。
    短いものですが、読みやすくてオススメです。