横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.110 配られたカード

hitori110-a.png横浜院長の柏です。こんなニュースを目にしました。
未婚女性が選ぶスヌーピー名言「配られたカードで勝負するっきゃないのさ・・・それがどういう意味であれ。」原文は”You play with the cards you’re dealt…”
調査では「働く未婚女性の実力で勝負し評価されたいという強い決意が感じられました」とありますが、そうなんですかね?元のマンガの文脈がわからないのでなんともですが、私には「家柄、容姿、学歴、仕事など、その人が置かれた状況を受け入れて、その上で生きていくしかない」と読めました。
生まれ育ち・・・どんな両親のもとどんな家庭に生まれてくるか、どんな教育を受けどんな学校を出たか、どんな体験をしたか・・・これらは過去のことであり、時計は逆回りしないのでこれらを変えることはできません。容姿もそうですね。顔立ちは変わらない(最近は整形手術もありますが・・・)し、ダイエットもその人なりの体のバランスがありますので限界があります。誰もがうらやむ美女になれるわけでもありません。
仕事・・・会社や職務内容、配属など・・・望んで入った会社だが入ってみたらやりたい仕事ができない、異動したらまるであわない環境だった、昇進したらあまりの仕事量でつらくなった・・・診察室でもお聞きすることの多い状況ですね。
生まれ育ちとは違い、仕事を変えることは可能です。しかし、明らかなブラック企業であったり、どうやっても適性に合わない会社であれば転職が望ましいでしょうが、転職はまだまだ敷居が高いのが日本の現状でもあります。
スヌーピーの名言集はなかなか含蓄があって面白い(こちらをどうぞ)のですが、「配られたカード・・・」が一位になるのはやはり時代背景でしょうね。私には、二つのことが連想されました。一つは、ご存じ”Let it go”です。当ブログでもすでに書かせていただきました(No.090)ので省きますが、配られたカードでありのままに生きる、そんな姿が共感を呼んでいるのではないでしょうか。
もう一つは、以前本屋で見かけたこの本です。
置かれた場所で咲きなさい 渡辺和子
タイトルを見て、はっとして手に取ったのを覚えています。著者は修道女で、岡山のノートルダム清心女子大学の学長を務めた方です(パリ帰りだとノートルダムという単語に惹かれてしまいますね)。上に書いたような内容を期待して立ち読みしたのですが、35歳で学長というポジションに置かれた苦労が中心みたいで、ちょっと一般庶民の感覚とはずれているかな、思ったのと違うなぁ、と思い棚に戻してしまいました。というわけで、私はこの本を読んでいないので講評する立場にはありません。YouTubeの動画も見ましたが、やはりキリスト教的な考え方に立たないと理解は難しいように感じます。
この言葉も、原文は”Bloom where God has planted you.”(神の植えられた場所で咲きなさい)ですね。自己流解釈になりますが、やはり配れたカードで、ありのままに、根をはって生きていくことを勧めているのでしょう。
この本のamazonカスタマーレビューを見ると、星5つが多い反面、批判的なレビューも目につきます。「咲けないなら根をはりなさい」というアドバイスに対して、心身ともに限界なのにまだ根をはらないといけないのか・・・という感想。身につまされますね。
置かれた状況を受け入れて生きるのか、受け入れず変える努力をするのか。ここの決断が一番大切ですね。人生そのものと言ってもいいのではないでしょうか。
厳しい状況を乗り越えることで、充実感、そして人生経験を得ることができますが、あまりに無理をすると心身に変調をきたしてしまいます。こわいのは、変調がはじまると判断力が下がってしまい、やめるべき時にそういう判断ができなくなることです。そうなると治療が必要となります。
一番大切なことは、受け入れることか変えるべきことか、それを見分ける力を持つことです。これは、ブログNo.032でご紹介したニーバーの祈りの教えるところです。人生は選択の連続。こうした「智恵」を大切にしたいものですね。
朝の通勤時はNHK-FMでクラシックを聴いております。先週ですが、西村朗がベートーヴェンの交響曲は、第9は別格とするとほかは8曲、弦楽四重奏が16曲、ピアノソナタは32曲と倍々になっている、何か意味がありそうだ、といった話をしており、面白い着想だと思いました。ちょうど2の3乗4乗5乗となっており、美学を感じてしまいますね。では今日はピアノソナタにしましょう。私のお気に入りは第21番「ワルトシュタイン」です。ポリーニでどうぞ。

コメント

  1. 匿名 より:

    なんだか『源氏物語』の「玉鬘の君」を思い出しました。強く、そして美しい女性だと思います。

  2. まねきねこ より:

    おお、玉蔓の君はまさにそのとおりですよね。瀬戸内寂聴先生の「私の源氏物語」と言う本はとても面白かったです。
     う~ん、なんでも働く女性の話になってしまうのですね。女性の力とあまりにもうるさく言われると、イスラエルみたいに女性にも兵役が課されるのではないかと心配です。今度日本で徴兵制度ができたら、男女平等だから絶対女性も召集されますよ。どちらかというと、スヌーピー君はまさに「ありの~ままで~」と言いたいのでは?と思いました。

  3. パパゲーナ より:

    柏先生、大きな示唆に富んだお話、ありがとうございます。
    (ポリーニの凄腕演奏まで貼り付けて下さって感激です。爽やか青年だったマウリッツィオもスッカリ気難しいオヤジ。。。もとい鬼気迫る哲学的な容貌となりました(笑))
    人気絶好の30歳で若年性パーキンソン病を発病してしまった、俳優マイケル•J•フォックスも先生が紹介してくださった「ニーバーの祈り」の毎日捧げていると著作で述べていました。
     神よ、
     変えることのできない事柄については
     穏やかに受け入れる恵みを、
     変えるべき事柄については変える勇気を、
     そして、それら二つを見分ける知恵を
     われらに与えたまえ。
    変えることがとても不可能と思われる厳しく辛い現実を前に、より大いなるものと繋がること(祈ること)で人はより深い人生を生き、祈りの中で智慧を湧かせ、歓喜にまで至ることができるのかもしれませんね。
    渡辺和子先生も、幼少からの悲惨を突き抜けた衝撃を、祈り昇華し深い人生を歩いて来られたのではないでしょうか。

  4. 匿名 より:

    男性ならどんな名言を選ぶんでしょうか?先生ならいかがですか?
    私は第2位の名言の方が好きです。福山雅治さんの曲「幸福論」の歌詞のようです。

  5. 横浜院長 より:

    Anonymousさん、ねこさん
    お二人とも通ですねぇ。源氏物語と来ましたか。。
    兵役の件はとても難しい問題をはらんでいますね。戦争にならないのが一番ですが。

  6. いちご大福 より:

    先生こんばんは…あっ…おはようございます?
    書き込むのは初めてかな…いつもお世話になってますが…
    受け入れることか、変えるべきことかの見極め…
    今夜も似たようなこと考えてました…
    ある意味究極ですね
    考えても答えが見つからないのにアホみたいに考えてました…
    気付いたらこんな時間で衝撃…
    でもブログ読んだら少し気楽になれました…
    いつも楽しいブログありがとうございます。
    おやすみなさい。

  7. 匿名 より:

    受け入れることもできず、変わることもできなければ、消えるだけですか?

  8. 横浜院長 より:

    Anonymous1さん(8/31)
    「いつの日かこれもみんな笑い話になるわ」
    Someday we’ll laugh about all this… Sally
    これよくないですかね。
    Anonymous2さん(9/2)
    いちご大福さんが書かれているように、これは「究極の問い」であり、考えても答えが見つからないこともあるでしょう。みなさんなら、このAnonymousさんの問いにどう答えますか。
    たしかに、誰もが渡辺和子氏のように昇華させることは難しいでしょう。一人一人、置かれた状況も違えば受け入れる力の大きさも違います。また、こころが疲れていると受け入れられるものも受け入れられないこともあります。Anonymousさんも、こころが疲れていませんか。
    一人で抱え込まず、まずは回りの人に聞いてみましょう。助けを求めてみましょう。それでも難しいときは、われわれ専門家にお尋ね下さい。一緒に考えましょう。

  9. パパゲーナ より:

    友人に相談して気が開けることも多いと思いますが、心も身体も環境も、余りの苦しさに抜き差しならいような自分になった時には(本当はなりそうな予感がした時に)精神科のドクターに心の内を洗いざらい聞いてもらうことが一番だと思います。
    やはり心の専門家の門を敲くことが本当に大事です。
    私は院長先生に、当時抱えていたグチャグチャの環境と、ウツで考える事も出来ない様々な問題を、縦分けて整理するお手伝いをしていただいたり、ぴーぴーと泣かせてもらったり、今でも助けて頂いているわけです。自分が家族や友人にさえ話すことのできない、赤裸々な思いを知って下さっているのは、院長先生だけです。本当にありがたいことです。
    初めてお世話になった精神科のドクターが柏先生だった事は、大変な幸運であったことを今更ながら、心から実感しています。
    http://www.youtube.com/watch?v=PV7P9x2eF7I&feature=youtube_gdata_player

  10. ミント より:

    「こんなこともあったねと いつか笑えるようになろう!」娘が渦中のときから 主人が本人や家族を励まし続けた言葉です。
    今は過去を振り返り 笑えることも沢山あります。
    忘れていくことも沢山あります。
    けれど 特に発祥当所の衝撃も大きかった頃のことが多いのですが ワープして光景が頭をよぎるだけで 過呼吸になるくらい苦しくなることもあります。
    時間の経過とともに。。ですかね。l
    配られたカード。
    良いカードを配られていたとしても そのカードを返上して新たなカードで頑張りなさい。それがあなたのカードです。というカードを配られた場合 ちょっと苦しいです、
    運命 というものですかね?
    けれど その中でも様々な道はあるのですが 結局選びとり 判断 決断してい
    いるのは自分たち自身で 後悔しない。というのもポイントかなあ。と思います。
    娘は どーゆーわけか 苦労ばかり選択しているように見えますが(笑) 病と向き合ってきた自信というものも含め 自分なりの花を咲かせている最中なのだろうな。と思い その強さを見習わなきゃと思います。
    長いこと 我が家の変遷を見ている先生にはなんとなーく理解してもらえるかなあ。と思います。

  11. mos-mos より:

    Anonymous (2014年9月 2日 13:12)
    受け入れることもできず、変わることもできなければ、消えるだけですか?
    Anonymous のコメントを読んでとても衝撃を受けました。
    先生は「究極の問い」である、とおっしゃいましたが、私は「叫び」という言葉を使いたいと思います。
    私を含めて、いろいろな思いをそれぞれ持っていると思います。
    私の場合、身体は回復し、やっと動き出した、というところですが、常に身体の中心の奥深いところに、何とも言葉で表現できないものがいるのです。(あえて言うなら以前登場した「黒い犬」のようなもの)
    それがいつも右に左へとグラングランとして微かにでも確実に存在してるのに、でも言葉にはならなくて…何なんだ!これは…?と思っていました。
    それをAnonymouさんが的確な言葉を使って表現してくれた、と感じました。
    表面的には何の問題もないし、以前のような気持ち悪さもない。
    でも、やっぱりずっと奥の奥にはそれがいるのです。
    ……消えたい。楽になりたい。
    もうずっと、見ない、見えない、感じないようにしてきた物を開けてしまったので、それを何とかまた箱に戻したい、でも蓋が閉まらない。
    でも、私は具体的な行動を積極的にはしません。
    でも何かそういうことが自身の身に、中途半端にならず確実に起これば絶対に楽なのに。
    これは、この先もずっと抱えながらいなければならないのでしょうね。
    あくまでも私はそのように思いました。
    とても長くなりました。(そして、申し訳ないほど暗い…(^_^; )

  12. 横浜院長 より:

    このコメント欄は、フリーパスではなく適切かどうかワンステップをへて掲載しております。
    他の方々への影響が心配される投稿は、掲載を見合わさせていただく場合もございます。
    今回、Anonymousさん(9/2)の投稿をあえて掲載しました。少し、皆様にお考えいただく機会を作るのもよいだろうと判断したからです。mos-mosさんはじめ、つらい気持ちを感じられた方もおられるかと思います。
    Anonymousさんのために、一言追加しておきます。
    受け入れられず、変われないとき。何もしない、動かない、という選択肢もとても大切です。
    mos-mosさんも「具体的な行動を積極的にはしません」と書かれていますね。
    人は「うつ」になると動かなく(動けなく)なります。それにはきちんと意味があります。
    うつの連載をはじめましたので、近いうちにご説明しますね。
    ミントさん
    ご主人、Sallyの言葉を実践されていたんですね。さすがです。お嬢様も、今は少しは昔のことを笑えるようになりましたかね。。その気持ち、今つらい思いをしている皆様にも届くといいな。