横浜院長の柏です。今回は、最近カルテを書きながら「あ、この言葉よく書いているな」と思った言葉について書いてみます。タイトルの「水かけ」です。なんのこっちゃ、と思いますよね。「水かけ」とは、患者さんがこれからしようとしている行動について、本当にそれでいいの?と、ちょっと冷静にもう一度考えてみるように促す精神科医の態度、行動を指します。これは、No.255からNo.267あたりでお話した「生活臨床」と呼ばれる治療技法の中で学んだ用語…のはず…です。
精神科における治療は、主に薬物療法と精神療法となりますが、精神療法と言われるものの中にはいろいろな要素が入っています。専門的には精神分析や認知行動療法などがありますが、クリニックの外来枠では現実にはそうした時間の必要な治療技法を本格的に取る余裕はありません。そのため、実際にはそれらのエッセンスを取り入れるか、あるいは本格的にそれらを行うにはカウンセリング(臨床心理士)との分業となります。では精神科医は診察室で何をやっているかというと、病気の知識をもとに、病気の嵐に巻き込まれているときは灯台となって安定の方向性を示し、安定したら今度は再燃・再発しないように生活や仕事などを見守っていく、それがわれわれ精神科医の本分です。そのために適宜介入し、アドバイスを送っていくことがわれわれの日常の通院精神療法でして、なにも催眠術をかけるとかマジカルなことをしているわけではありません。「生活臨床」はそのための手法のひとつで、以前のブログにも書きましたが私は研修医時代にこれを師匠の宮内勝先生から叩き込まれており、今でも外来診療の柱となっています。
精神科に通院される方々、精神疾患や発達障害などをお持ちの方々は、その疾患や特性のために、社会的場面や人生の転換期などに適切な判断、認知、行動を取れないことがあります。なかでも、その判断はどうか、明らかに失敗する可能性が高い場合、いかにして思いとどまってもらうか、が勝負になります。そのために行うのが「水かけ」となります。水をかける、表現がちょっと悪いですが、冷水を浴びせて目を覚まさせる、といった感じでしょうか。
短時間のアルバイトからはじめて徐々に社会復帰していくべきタイミングで、正社員に応募する。明らかに適性のない仕事につこうとする。さらには、怪しい投資話に乗ろうとする、などなど、主治医としては心配事に事欠きません(^_^;;。こうした時、はっきりダメ出しをしたり、あるいはじっくりと結果を考えさせたり。その方の性格、その時の状況を踏まえて適切な方法で「水かけ」を行うのです。一方で、適切な行動を取ろうとしているがなかなか自信が持てない、一歩を踏み出せない、そんな時には「背中を押す」ことをします。前に進むべきときには背中を押し、立ち止まるべきときには水をかける。これが適切にできる治療者がよい治療者ですが、そこはなかなか難しく、そのためには多職種や支援者、家族など多くの関係者との連携が必須となります。治療共同体が機能し、適切なタイミングで(ここが大事!)適切な働きかけが行われれば患者さんの社会復帰、そして回復にしっかりとつながっていきます。
生活臨床では、それをよりスムーズに進めるために、患者さんの生活特徴、生活類型といったものを捉え、それらに従って支援を組み立てることで成功率を高める工夫を行っています。なので、「先生はぜんぜん私の気持ちをわかってくれない」と言わずにちょっとは精神科医の言葉に耳を傾けてくださいね(汗)。ふだんは少し離れたところから暖かく見守り、いざと言うときには水かけ、背中押しなども含めて熱心に介入、サポートを行う。そんな精神科医でありたいと思っておりますです、はい。
今日の一曲は、ザ☆ウルトラマンからエンディング「愛の勇者たち」です。ザ☆ウルトラマン(なんでジ・ウルトラマンじゃないんだ、というのは置いといて)は、前回ご紹介したイデオンの前年、私が高2の時に放映されていたウルトラシリーズ初のアニメ作品です。1970年代歌謡曲を思わせるメロディーラインが好きです。ではまた。
コメント
お久しぶりです さくらです
色々な話を載せるんですね
私が、子供と一緒に観てたのは「ウルトラマンコスモス」です ウルトラマンの二刀流です 太陽と月ですかね そんな感じでした 数ヶ月前 横浜のアーティストが、怪獣を切り刻んで(複数の怪獣 ダダ等)色々なパーツをくっつけて汚いウルトラマンを作って展示会に出してました 見たとき笑っちゃいました(展示会には行きませんでした) 確か カラータイマーがありませんでした 永遠に戦うのでしょうか?