横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.394 スペース鼎談

横浜院長の柏です。前回のブログが思った以上に反響がありまして、その延長上で?、Twitter(私のIDは@psydrkです)上で尊敬申し上げていた二人の先生方と、前回のブログでも扱った「脳波などで発達障害を診断できるか」というテーマでお話する機会をいただきました。お二人の先生とは、臨床心理士でニューロダイバーシティ(神経多様性)の視点から発達障害に関わる活動に長年従事されている村中直人先生と、ASDの感覚や運動について基礎的かつ重要な研究を行っている脳研究者の井手正和先生です。大学や研究所では研究者に囲まれて生活していたわけですが、13年前にクリニックに移ってからは日常的には研究者の方々と話す機会も少なく、私としても大変刺激的な時間を過ごすことができました。この鼎談はTwitter上で行われる「スペース」なる会議室で行われました。8月8日の開催日から一ヶ月間は下記から聴くことができますので、2時間という長丁場ではありますがぜひお聞きいただければと存じます。
https://twitter.com/naoto_muranaka/status/1555106805621342208?s=20
私からは前回のブログでお話した通り、発達障害の診断は丹念に困りごとの背景にある症状・特性を聞き取っていき、幼少からの様子を詳しく親や通信簿などの第三者情報を含めて聞き取っていくことから診断基準にあてはめていくという、きわめて地味な作業の積み重ねであり、数ヶ月程度は時間がかかりうること、また発達障害の治療とは長年にわたって当事者と寄り添いつつ、特性の長所を活かし、短所をカバーしていく方法論を探っていくという、これまた地味な作業の積み重ねであることを主にお話しました。パパッと機械で診断がつき、パパッと機械で治療ができるならそれはそれは素晴らしいことですが、発達障害の診断や治療とはなんぞや?という根源的なことから考えていくと、それって一体何をやっているのか、ちょっと私にはよくわからないのです。
脳科学者の井手先生からは、脳波やMRIなどの臨床応用される脳検査について基礎的なところからわかりやすい説明がありました。現在までの研究の実際を鑑み、現時点ではまだそうした脳機能検査で発達障害を「診断」できる水準にはないであろうという、そういうお話だったと思います。
ニューロダイバーシティの伝道師(失礼(^_^;)こと村中先生からは、神経多様性の中に位置づけられるようになってきた「発達障害」について、その「診断」や「治療」の意味について問い直す、そんなお話だったかと感じました。うんうんと頷きながら聞いておりました。宇宙人、とされる発達障害者に対して、地球人(定型発達者)だって宇宙人なんだ、というお話がなかなか印象的でした。
「スペース」は覗き見したことはあるのですが、喋る側での参加は初めてでしたので、あわててブルートゥースヘッドセットをAmazonで当日朝にポチって参加しました(^_^;。村中先生の予告ツイートに予想よりはるかに多いリツイートといいねがついていたので緊張しまくりだったのですが(汗)、当日はお二人の先生方のお人柄もあり、落ち着いて会話を楽しむことができました。
今回の件ではマスコミからもいろいろ取材を受けています。まずはAERA.dotに記事が載っていますので、こちらもぜひお読みいただければと存じます。
木下優樹菜さん「脳波でADHDが分かった」発言で物議 医師らは全否定 AERAオンライン限定 2022/08/11 11:30
ここで、今回ご一緒させていただいた先生方の著作を紹介させて下さい。村中先生は、「ニューロダイバーシティの教科書: 多様性尊重社会へのキーワード」
「〈叱る依存〉がとまらない」
村中先生の当事者をみる温かい目が印象的な二冊です。井出先生は、なんとこの12日に上梓される
「科学から理解する 自閉スペクトラム症の感覚世界」
これは楽しみですね。私も予約済みです!
最後に今日の一曲のコーナー。このコーナーも長くなってきましたが、まだまだ一度もかけていない名曲がたくさんあります。今回は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調作品30です。先日行われた、クライバーン国際ピアノコンクール2022ファイナル、優勝者の韓国出身18歳の新鋭、ユンチャム・イムのライブ演奏でどうぞ。ではまた。

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