横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.348 トリンテリックス

横浜院長の柏です。セイバーについていけなくなり、戦隊ともども遠ざかってしまったニチアサヒーロータイムですが(おかげで息子たち起きてこないゾ)、3月から新戦隊「機界戦隊ゼンカイジャー」がはじまります。なんといっても注目は、サウンドトラックを渡辺宙明御大、御年95歳が担当されることです!!No.326でも書きましたが、子どもの頃彼の音楽に夢と力をもらい、悪の科学者を目指したワタクシには生涯の恩人であります(なんで町医者やってんねん、というツッコミはおいといて)。ここで一発、御大の名作から「太陽戦隊サンバルカン」をどうぞ。


ちょっと心配してるんですが、セイバーのライダーたちまるで戦隊みたいなノリになってて、さらにゼンカイジャーはヒーロー1人で、あとはロボットとのこと。なんかライダーと戦隊で数年後に一本化されてしまわないかと心配しているのは私だけでしょうか??
さて、この1年あまりで登場した新しい精神科領域のお薬が3つもありますので、このあたりで独断と偏見で私なりの使用感を書いてみたいと思います。抗うつ薬のトリンテリックス、非定型抗精神病薬のラツーダ、睡眠導入剤のデエビゴ、の3つです。どうもわが国は欧米よりも遅れて発売される流れが強く(肝心のコロナワクチンすらそうだもんな…オリンピックやる気ないよね、どうみても)、とくにラツーダは大日本住友、デエビゴはエーザイと日本の会社が開発したにも関わらず、アメリカよりもトリンテリックスは6年、ラツーダは10年、デエビゴも半年遅れでの発売です。なかなか治験がうまくいかない(治験デザインの問題もあり)こともあり、開発順=発売順とならないこともあって、より新しい薬が優れた薬とも限らないのが常なのですが、今回の3つは目新しいだけではなく、どれもキラッと光るものがあります。いずれも高い効果を持つと同時に、とくにトリンテリックス、ラツーダは競合薬と比べて副作用の少なさが特筆されるところと感じます。順に見ていきましょう。今日はトリンテリックスです。

トリンテリックス(一般名:ボルチオキセチン)
クイントリックスじゃないよ(分かった人は同年代以上ダゾ(^_^;;) デンマークの製薬会社ルンドベック社が開発、日本では同社と武田薬品が販売。武田は日本屈指の製薬企業ですが、精神科医としてはこれまでなじみがなく、専門領域で武田の製品を扱うのは(たぶん)初めての経験だったりします。抗うつ薬なのですが、薬理プロファイルがなかなか個性的で、様々な作用を1剤で持っている、「1錠で何倍かお得な」抗うつ薬となっています。具体的には、SSRIと同じセロトニンの再取り込み阻害作用に加えて、セロトニン1A, 3, 7(さらには1B, 1Dにも)受容体に作用してモノアミン系(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン)、ヒスタミン、更にはアセチルコリン作動性ニューロンの働きを強める、というユニークな作用を持ちます。
既存の抗うつ薬には様々な薬理作用が知られていますが、なかでも「最強」と言われているのがSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)であるサインバルタまたはイフェクサーに、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)であるミルタザピン(レメロン、リフレックス)を組み合わせた「カリフォルニア・ロケット」と呼ばれるものです。これは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害によりシナプス間隙の両者の濃度を上げ、ノルアドレナリンα2とセロトニン2, 3受容体に働き両者の働きを高めるというデュアルアクションにより高い抗うつ効果を狙っています。トリンテリックスは、一剤でセロトニン再取り込み部位、1A, 1B, 1D, 3, 7受容体と複数の部位に働くことで、カリフォルニア・ロケットと似た作用が期待されます。
実際の使い心地ですが、まず副作用が目立たない。SSRI/SNRIでは消化器系副作用(嘔気、下痢など)、アクティベーションと呼ばれる逆説的な情緒不安定な状態、NaSSAでは眠気、体重増加などによく出会いますが、この薬剤は一部の方で嘔気は出るもののSSRIよりかなり少なく、アクティベーションもまだ経験していません。SNRIのぐっと持ち上げるようなパワフルな抗うつ作用とは一味違って、効く人の場合は比較的速やかにすーっと、なにか自然によくなるような感触です。サインバルタ(SNRI)がターボエンジンなら、こちらはテスラの電気自動車みたいな感じでしょうか。個人的にはこれまでサインバルタが、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み作用の強さ(Ki値の小ささ)から単剤では最強と考えて頻用してきましたが、この個人的には「ナチュラルな」と表現したくなるトリンテリックスの効き方もなかなか捨てがたいものがあるな、と考えております。ラツーダ、デエビゴについては次回以降にいたしましょう。
(注:他の抗うつ薬を処方している患者さんも多数いらっしゃると思いますが、医師はそれぞれケース毎に最適なものを考えて選択しておりますのでご心配なくです)
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では今日の一曲(あ、サンバルカンはおいといてw)。美しい日本の紀行番組テーマソングシリーズ、今日はNHK「さわやか自然百景」のエンディングテーマ「自然への祈り」です。新日本紀行小さな旅新世界紀行、(さらには遺跡シリーズもあるでよ:未来への遺産シルクロード)と、ホンマこうした企画のテーマは心洗われますね。
で、なんで今回この曲かと申しますと、この番組、うちのひめちゃんの大のお気に入り。鳥や魚が出ると写真のように飛びつきます(笑)。繰り返しビデオで見るのをせがまれるので、私も自然と覚えてしまったのでした。オープニングもいいですが、このエンディングのほうがよりしみじみくるのを知ったのもひめちゃんのおかげです。ではまた。

コメント

  1. 横浜院長 より:

    すみません、最後のオープニングじゃないですね。
    オープニングの動画見当たらないので、こちらで。
    https://www.youtube.com/watch?v=gaWBHDM4vmY&t=20s