横浜院長の柏です。うーーん、せっかく滅亡迅雷.netが全員揃っていいところなのに…この先の収録無理ですかねーゼロワン(泣)。
さて、当院でお会いする方々にお聞きしても、新型コロナウイルスのために多くのご家庭で生活様式が変化していますね。ダンナも子どもたちも家にいて、奥様の負担がマシマシ…テレワークお父さんの会議と息子のウェブ講義がバッティング…大変なお宅も多いようです。しかし、集団の同調圧力の中、皆で満員電車に乗り、空気を読み周囲に合わせて仕事や学業を行ってきたプレ・コロナの日本人のあり方は、ソーシャル・ディスタンスを求められるアンダー・コロナの生活様式にあって変化していくのではないでしょうか。ポスト・コロナといいますが、ワクチンや治療法が確立し流通するまでの数年間は、アンダー・コロナの時代が続きます。コロナウイルスとの共生の時代は、新しい生活様式とも共生する時代となります。精神科医としてもこの生活様式の変化には注目していきたく、とくに発達障害や社交不安症など、社会生活に関わる困難を抱えている方々にとってメリットになる可能性を探っていきたいと考えています。
ところでテレワークや自宅待機が長くなると、No.321にも書きましたが、とくに意識して生活しない限り運動不足となりますね。人間も動物ですから、本来はお日さまが出ている時に活動して、お日さまが沈んだら眠るのが本来の姿。日中体を動かすことにより疲れが生じ、それが心地よい眠りを誘います。あまり動かないことでなかなか眠りに入れず、また外に出ず、お日さまに当たらないために生活リズムも乱れてしまうことが危惧されます。また、通勤の日々から自宅生活の日々、突然の環境の変化に心身がついてくるのはなかなか大変で、みなさん知らないうちにここ数ヶ月は結構頑張ってしまっているようです。いよいよ緊急事態宣言解除の方向のようですが、実は精神科医としてはここからに注意が必要だと思っています。
「荷降ろしうつ病」という言葉があります。頑張って重い荷物を運んできて、いざ肩からその荷物をおろしてホッとしたところでうつがやってくる、そんな例えですね。長年働いて、定年になったとたんに何もやる気がなくなり寝込んでしまう。受験が終わり、志望校に入ったのになぜか元気が出ない。頑張っている最中は意外と大丈夫だけど、一段落してホッとしたところに「こころの隙」が生まれます。環境の変化は、より大変になるところだけではなく、楽になる、もとに戻るところも要注意なのです。今回、緊急事態宣言が2ヶ月に及び、みなさん不自由な中、ウイルス感染への不安も抱えつつ自粛生活を送ってきました。いざ元の生活に戻れる、という時に発生するふとした気の緩み。長期間に及んだ無意識の緊張、疲労の蓄積がどっと出てくるかも知れません。
一方で、もともとオフィスや学校などの環境にしんどさを感じていて、今回自宅生活がとても快適に感じられていた方にとっては、辛い場所に戻らなくてはいけないということになり、これからが一番つらい局面かも知れません。ここでお考えいただきたいのは、最初にも書きましたがまだ続くアンダー・コロナの時代、これまでの常識は変化してくるはずだということです。これまでのような密な人間関係には、「密です!」と堂々とNOを出してよいのです。自宅生活の快適さは皆が気づいたところです。当分、宴会も集団活動も難しい状況は続きます。自分のペースを守り、新たな生活スタイルを作っていけばよいのです。御田寺圭氏のこのブログも参考になるかと思われます。このブログにもありますが、4月の自殺者数は前年比2割減とのこと。商売が危機的な状況になった方も多い中のこの数字は、無意識の頑張りがそれを排除したのか、あるいはそれ以上に出勤・通学ストレスがなくなったことのメリットの方が大きかったのか(これはより詳細に分析しないと、本当のところはわかりません)。この先これが逆転しないように、時代の変化、世の中の変化をしっかりと感じ、実践してほしいと思います。
今回の場合、緊急事態宣言が解除されるといってもウイルスがいなくなったわけではなく、さらに長期的に警戒は必要です。長期的な緊張、消耗が続く可能性もあり、そこからゆっくりとうつが顔を見せてくることもあるでしょう。頑張りすぎず、しかし気を緩めすぎず。人生何事も中庸、バランスが大切です。この「バランス」という単語。コロナ問題が表面化したあたりから、カルテにこの単語を記入することがとても増えました。新型コロナという大きな風が吹く中、倒れないようにうまくバランスを取っていく。そして風がやんだかに見えても、油断せずに体勢を保ち、倒れないような注意は続けていく。「バランス」を意識して、この災禍をみなさんで乗り越えていきましょうね。
今日の一曲は、盲目の名テノール、アンドレア・ボチェッリが感染爆発を起こしているミラノ・ドゥオーモ(大聖堂)前で歌うAmazing Graceです。ボチェッリはその半生が昨年映画化され、見に行きたいと思っていた矢先にこんな状況となってしまいました。感染が落ち着いたらぜひ見に行きたい映画です。ではまた。
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