横浜院長の柏です。本日12月28日をもって年内の全診療を終了いたしました。今回が今年最後のエントリーとなります。相鉄がJR直通となり、私も先日はじめて直通ルートで都内から帰宅しましたが、不思議な気分ですね。定期客の切り替え時期のこともあり、まだ空いていて快適。ただ、横浜駅をパスすることになるので、横浜駅で「客商売」(この表現が適切かわかりませんが、客観的にはそうなる)をしている身としては複雑な気分でございます。
羽沢横浜国大駅という新駅ができたので、われらingress Enlightened(緑)チームは22日日曜日に同駅基点のNOVAを計画、実行しました。NOVAとは新星を表す天文学用語で、ingressでは一点に向けて四方八方のポータルからリンクをはりまくる、超新星爆発をイメージした計画のことをいいます。写真が完成図で、オペレーターの指示の下、ポータルを回って破壊・構築・リンク張りを行うフィールダー、基点を青さんの破壊から守る防衛隊に別れて計画を遂行します。私は基点から北東方面でフィールダーとして参加、全380本超えのリンクのうち15本を引きました(なお、リンクを引くには羽沢横浜国大駅のキーが必要なので、事前に何度も訪れてはキーを抜いておりました)。子供の頃、陣取りなどで遊んだときのワクワク感が蘇ります。ポケモンGOもいいけど、そちらはあくまでも運営会社の計画どおりイベントが進みます。ingressは、こうして皆で計画・立案して遂行するところが素晴らしいんですよね。
さて、No.292で「知の敗北」として子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)においてわが国の置かれている危機的状況についてお話しました。ノーベル賞受賞の本庶佑先生はじめ、日本産科婦人科学会、さらにはホリエモンまで専門家や知を司る方々がそろってワクチンの必要性を訴えているにも関わらず、肝心の厚生労働省は未だにワクチンの積極的推奨を行っていません。小6〜高1の女子は公費で(無料で)受けることができる定期接種に指定されているにも関わらず、です。これは、接種開始後に一部副作用を訴えるケースがあり、薬害を訴えるグループの活動があったからです。しかし、名古屋市7万人調査や厚労省祖父江班の研究報告にもある通り、ワクチン接種の有無と、訴えられる症状の出現確率には因果関係がない…すなわち、ワクチンと症状は直接の関係はない、ということがすでに医学的には証明されていますし、同様の副作用報告は海外でもありますが、この記事にあるように海外では多くの国で国が確固たる方針を持ち、接種が行われています。これに対して、厚労省が積極的接種を推奨していないためにわが国の接種率は世界各国に比べて絶望的な低さです。このままでは数十年後、世界中で日本だけが子宮頸がん多発国となってしまいます。この記事など読むと、厚労省がマスコミや世論、圧力団体に気を遣い、なすべきことができていないことがよくわかります。現役厚労省担当者の皆さんには、人の顔色ではなく、科学の方を向いて、そして国民を救う官僚の良心をもって仕事をしていただきたいと切に願います。
ワクチンは医学史上最大の発明と言っても過言ではなく、各種病原体へのワクチンにより救われた人の数は星の数ほどになることでしょう。HPVワクチンは、直接がん予防ができる唯一のワクチン(注:B型肝炎ウイルスワクチンも、将来の肝臓がんの予防に役立ちますが)です。ワクチンでがんが予防できるというのは画期的なことです。わが国で一時撲滅宣言が出たはしかがまたぞろ発生するのも、ワクチン非接種者が海外から持ち込まれたはしかウイルスに感染することが原因です。ワクチン接種率が高ければ「集団免疫」ができて流行は阻止されるのですが、それができていないのがわが国の現状なのです。ラグビーワールドカップで日本も対戦したサモア。人口20万人のこの島国では、現在はしかが大流行(12/5時点で62名が死亡)して非常事態宣言が出されています。ここでも原因となったのは反ワクチン活動家の運動による接種率の低下であり、活動家は逮捕されています。
話は戻ってわが国の子宮頸がんワクチン。中心になって反ワクチンのプロパガンダを行っているのは薬害オンブズパースン会議なる団体です。薬害AIDSや肝炎ウイルス問題などの薬害では被害者の立場に立ち優れた活動をしていましたが、最近は反ワクチン思想にすっかり侵されてしまい、NHKのはしか報道にもかみつくし(サモアの件での声明まだですか?)、子宮頸がんワクチンに対しては大々的に反ワクチン活動を行っています(NIHの先生が正鵠を射た反論をしています。あ、ツイッタランドではそのTaka先生@mph_for_doctors、村中先生@rikomrnk、衣笠先生@dr_kinugasa、たぬきち先生@TOTB1984が秀逸)。政治家でも、日野市や(わが群馬県の)伊勢崎市あたりのトンデモ議員がツイッタランドでも毒を吐いています。山本太郎に至っては、「アップデートできていません」といいながら堂々と街頭で反ワクチン演説。その無責任さには呆れてものが言えません。
ああ、ホンマに「知の敗北」やなぁ、と嘆いていたら、「自民党は11月26日、『HPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す勉強会』を開き、議員連盟を発足させた」という報道がやってきました。呼びかけ人は三原じゅん子。おっと、われらが神奈川県選挙区ではないですか。ご本人も子宮頸がんで子宮を取った当事者とのこと。ぜひ頑張っていただきたいです。他にも、志のある議員、市長などが声を上げ始めています。年の瀬に、ようやくわが国にも「知の復権」への期待が湧いてきました。来年は期待できる年になりそうです。
※反ワクチンの方々とここで議論する気はありませんので、そうしたコメントはあっても一切掲載いたしません。ご了解ください。
今年最後の今日の一曲は、バッハの管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068から”Air”をどうぞ。わが国では「G線上のアリア」として親しまれている名曲です。トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラの演奏でどうぞ。では皆様もよい年をお迎えください。ではまた来年。
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