横浜院長の柏です。早くも師走ですね。読書の秋…というには遅すぎますが(^_^;今日は「本」談義といたしましょう。9月にアメリカに行った際、宿のお兄ちゃんに勧められてサンフランシスコの空港で買ったダン・ブラウンの最新作”ORIGIN“、ようやく読了しました。マイケル・クライトン亡き後、知的好奇心を最高にくすぐり、物語としても最高のエンターテインメントを与えてくれる作家はダン・ブラウンだと思います。有名なダ・ヴィンチ・コードにはじまりその前作にあたる天使と悪魔、ロスト・シンボルにNo.191でもお話したインフェルノと、ラングドン教授シリーズは全部読んでいるワタクシですが、今回もやられました。これまでの作品が、象徴学の教授としてのラングドンの活躍を描いてきたのに対して、”ORIGIN”ではサイエンスの最前線を、実在の科学者も登場させて描き切るという新たな挑戦に成功しています。ネタバレにならない範囲でご紹介しようと思いますが、”ORIGIN”とは弁当屋さんではなく(^_^;「起源」のこと。メインテーマは、「われわれはどこから来てどこへ行くのか」です。No.088でマーラーの生涯のテーマとしてもご紹介したものですね。この世に生を受けた者としては、一度は考える問いでしょう。天才未来科学者エドモンド・カーシュは、実在の天才物理生物学者ジェレミー・イングランドの理論をもとにスーパーコンピュータを駆使してこの問いに答えを出す…という未来科学の物語です。いやすごいです。
ジェレミー・イングランドは若干37歳のMIT(マサチューセッツ工科大学)教授で、ダーウィン以来の進化生物学の天才と称される人物です。彼によると、生物の進化とは「環境からより効率的にエネルギーを吸収し、周囲に散逸する構造を取ること」とのこと。エントロピーの増大という熱力学の第二法則の延長上にあるもののようです。なかなか難解ですが、直観的には正しい気がいたします。彼の理論については、こことかここあたりをご参照ください。小説では、イングランド自身も登場し、カーシュの大発見につながる役目を果たしています。実はキリスト教国アメリカではダーウィンの進化論を信じていない(神による創生を信じている)人が半分近く(ちょっと前までは過半数だった!)おり、そうした背景を知って読むと奥深いものが感ぜられます。
もちろん前作までのようなラングドンの謎解き、最後のオチに至るまでいつものラングドンシリーズの魅力もそのままです。今回の舞台はスペイン。宮殿からカサ・ミラ、サグラダ・ファミリアとワクワクする舞台設定を見事に活かしきっています。近未来から知的好奇心を満たしたい方はぜひお読みください。日本語版もすでに出ておりますよ。
さて、一応精神科医のブログですので、ここで最近よかった発達障害系の本を2冊ご紹介しましょう。一冊目はこれ、ADHD当事者の借金玉さんが書かれたハック本です。こうしたハック本、How-To本はいろいろあるのですが、ワタクシ的にはこの本が結構ツボにきました。章立てを見ても、道具に頼れ、会社は「部族」である、からはじまりうつの底からの脱出法まで、となかなかでしょ?ADHDの方には一覧性がすべて(見えない=存在しない)とか、「完璧な休日」のとり方、ビジネスホテルに「外ごもり」する方法など、自分でもやってみたくなる(ワタクシ自身はADHDよりもASD的と思っておりますが)ハックが満載です。
もう一冊は、発達障害専門のキャリアカウンセラー、木津谷岳先生の書かれた雇用本です。木津谷先生は、私の講演会にお越しいただいた際にお話する機会がありましたが、大変真面目に発達障害雇用に取り組んでおられる方です。日本的なメンバーシップ的雇用(企業の一員として頑張る、人を仕事にあてる)よりも、欧米型のジョブ型雇用(職務を限定し仕事に人をあてる)の方が凸凹のある発達障害の方には望ましいというのは全くその通りだと思われました。この国ならではの障害者雇用の難しさを考えさせられます。巻末の方には、当院通院中の方々が活躍されている企業も紹介されていて(先日クローズアップ現在にも出ておりましたが)嬉しいところでした。雇用側の企業、人事、職場の方々にまず読んでいただきたい本ですが、当事者でこれから、あるいは現在就労されている方にもとても参考になる内容だと感じました。
では今日の一曲。作曲家の前田憲男先生が逝去されました。特撮・アニメファンとしては、数は少ないものの印象深い曲が思い出されます。アニメではクラッシャー・ジョウ(今はなき東急文化会館で見ましたね〜)ですが、今日は異色の特撮番組、スターウルフのオープニングにしましょう。スターウルフはE.ハミルトンの本格SFでして、私も子どもの頃に小説は全部読みました。スターウルフは円谷プロにより、本格SFとしてスタートしたのですが(たしか日曜夜7時のゴールデンタイム)、視聴率が上がらず(裏番組のスタージンガーに取られ)、残念ながら後半は子ども向け路線へとシフトしていってしまった作品でした。私の父親はエンジニアでして、今はなき三洋電機で定年まで勤め上げたのですが、この番組は三洋電機が提供していたため、珍しく一家で見ていた特撮番組でした。前田先生に黙祷。ではまた。
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