横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.195 子どもへのまなざし

ライダーがないと一週間が始まった気がしないですねぇ(^_^;、横浜院長の柏です。病気シリーズのあいだ、なかなか書けなかったネタをちまちま書いていきましょう。今日は、育児について書いてみます。わが家は、高2、小6と男の子が二人います。そろそろ「育児」でもなくなってきていますが、振り返れば苦労の多い17年間でした。当たり前のことですが、最初からベテランの親などいません。とくに初めての子供は試行錯誤。いろいろ本を読み、いろいろな人の話を聞き…皆さん、その中から自分にあったものを取り入れて育児に生かされていることと思います。わが家の場合、バイブルとなったのが児童精神科医・佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」でした。わが家にはこの本と、その続編「続・子どもへのまなざし」があります(…ん?見つからないんだけどかーちゃん、もしや捨てた(^_^;?)。Amazonで見たら「完・子どもへのまなざし」というのもその後出たようですが、うちにはありません。佐々木先生は私が研修医の頃、非常勤講師で東大にもいらしており、当時ポリクリ(外来初診研修)で何度かお世話になっておりますが、その後は専門も違い、お近づきになる機会がありませんでした。佐々木先生の教えはシンプルで、「子どもはまず幼少期に、保護者という他者から、自分が望んだようなやりかたで、十分に愛され大切にされたという経験をすること」が大切だということに尽きます。あなたはそのままでいい、という無条件の愛情です。もちろん、実際には育児の場は戦場ですからそうそううまくは行きません。親も人間ですから、怒ることも構わずに放っておくこともありました。どこまでできたかはわかりませんが、基本的なコンセプトはそこにおいていたつもりです。上記の書物はお薦めですが、とりあえず今、ということであればこんなツイートもありますよ。私もフォローしており、いろいろ思い出しては考えさせられています。
幼少期に親から十分な愛情を得られなかった場合−極端な場合としては虐待やニグレクトがあるわけですが−精神科的には「愛着の問題」というものが問題となることがあります。具体的には、思春期以降の様々な精神科の病態、うつ、不安、摂食障害、依存、境界性パーソナリティなど、様々なものに関連する可能性があるとされています。以前からお話している通り、精神科の病気は個体側の要因と環境側の要因との相互作用で決まってきますので、客観的には些細な親の反応に大きく傷つく子どももいれば、客観的には多大なストレスでも平気な子どももいて、なかなか簡単ではありません。
世には「毒親理論」なるものがあり、親の責任を問う風潮もあるようですが、私はそれは過去にとらわれることであり、もっと現在志向、未来志向であってほしいと思っています。愛着の問題を抱えておられる方とは、今の自分を「そのままの自分でよい」とは思えない方です。大切なことは、これからその感覚をどう育てていくか、です。それには一歩一歩進むしかありません。「今の自分で大丈夫」、そう思えるためには小さな自信を見つけて、それを大きく育てていくのが一番です。どうやって小さな自信を見つけるか、どうやってそれを大きく育てるか。精神科医として患者さん達と接していると、いいところがたくさんあるのにまるで気づけていない…まるで見えていない方々の多いことに気付かされます。患者さんのいいところ…自身の糧になりうるもの…を的確にキャッチして、正しく伝えていくこと…これは優れた精神科医には必須の技術でしょう。私もまだまだ、修行の毎日ですね。いいところのない人はひとりもいません。どんな人でも、「今の自分で大丈夫」と思えるようになるはずです。私はそう信じています。そしてどんな病気であれ、治療の目標はそこにおいておけば間違いないように思います。
テーマに合わせて、今日の一曲はシューマン「子供の情景」です。有名なトロイメライは7曲めですね。クララ・ハスキルのピアノでどうぞ。

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