横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.160 The world around you…

hitorigoto-160a.jpg横浜院長の柏です。ここではしつこく書いておりますingress。先日私も歩行距離が1,000kmを超えました。健康のためにもみなさんもぜひ、緑チームにどうぞ。実世界のマップを用いたバーチャル空間での陣取り合戦ですが、そのキャッチコピーがこれです。
The world around you is not what it seems.
(あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない)

バーチャル世界の存在を示唆したこのコピーですが、実は精神科の分野でもとても大切なことを言い表してもいるんですね。
そもそも、われわれは世の中を正しく見ているわけではありません。この二つの絵を見て下さい。
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どちらも有名な絵ですね。左の絵では、二本の横棒の長さは実は同じなのですが、下の方が長く見えますね。右の絵は、見方によって向こうを向いた貴婦人にも、あごの大きなおばあさんにも見えます。このように、人間の知覚は正しく認識できなかったり、思いこみによって見方が簡単に変わったりしてしまったりします。これらは脳の特性によるものですが、とくに人の顔を人の顔として認識する力は、ほかの人たちと関わらずに生きていけない、社会的動物である人間にとっては大切な力です。誰かと話している時にお互いの目が合うのは、そこにあるのが人間の顔であるという認識ができているからであり、かつそれが自分と同じ人間であるということを理解しているからなのです。われわれは普段こういうことは意識しませんが、実は自動的に脳の素晴らしいメカニズムが発揮されているわけです。自閉症の子どもの場合、こうした「人の顔を認識する力」が弱く、その結果としてなかなか視線があわない、ということが生じます。目に見えている世界、部屋の壁、天井、家具、テレビ・・・これらと人間では質が違う、という認識があるから視線があうわけですが、これらと同等になってしまえば視線があうわけがありません。自閉症よりは軽度の非定型発達をたどるアスペルガー症候群、広汎性発達障害(新基準では自閉スペクトラム症といいます)の方の場合も、視線があいにくかったり、人の顔の認識が難しい(顔が覚えられない、表情の変化がわからない)といったことが見られます。ただ考えてみると、こうした方々の方がより周囲を客観的に見ているわけでして、われわれ定型発達をたどった人間の方が、より脳のバイアスに支配されているということも言えると思います。”The world around you is not what it seems.” ですよね。
うつ病、統合失調症などの精神疾患の場合も、病状により世の中の見え方は大きく変わってしまいます。うつ状態が強くなると、世の中は暗く悲惨で何もいいことがない、としか認識できなくなります。精神病状態になると、周囲がみな敵に思えたり、実際にはない声が聞こえたりものが見えたりします。
「あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない」普段から、頭に置いておきたい言葉ですね。
今日の一曲です。パリでのテロは去年訪問した私にも大きなショックでしたが、ニュースを見ながら頭に浮かんだのがこのメロディーでした。レ・ミゼラブルから”Do You Hear The People Sing”をどうぞ。

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