横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.132 うつ病の症状論(その3)

横浜院長の柏です。うつ病DSM-5診断基準、5番目は「精神運動性の焦燥または制止」です。「精神運動性」というのは一見難しそうな言葉ですが、要するに「気持ち」と「からだ」ということです。気持ちが落ち着かず、体もじっとしていられないような焦燥感の強い状態。あるいは、気持ちもからだも動かない、止まってしまう状態。「焦燥・制止」と今回も、前回の「過食・不食」「過眠・不眠」と同じように相反する二つの状態が並べられていますね。うつ病は本当に不思議な病気で、このように人によって、または同じ人でも時によって、正反対といっていい症状をきたしうるのです。ただ、今回は前回のような「定型」「非定型」の分類にはあてはまりません。「制止型」「焦燥型」という分類を唱える方もありますが、実際には制止が強かった人が、いきなり焦燥が強くなることもあり、そう簡単ではありません。
うつ病をエネルギーが低下する病気と考える立場からすると、精神運動制止はまさにその典型的な症状と言えます。脳がオーバーヒートしたような状態であり、考える力、感じる力、動く力がすべて下がってしまっています。これがさらに極端になった状態を、うつ病性昏迷といいます。前述の力がすべて奪われた状態で、話しかけにも応答できず動くこともできない状態です。クリニックの外来では、滅多にお目にかかることはありません。昏迷の「昏」は昏睡の昏ですね。黄昏(たそがれ)などにも使いますね。訓読みでは「くらい」と読むそうで、意識がなくなるような状態のことですね。うつ病性昏迷は、決して意識がなくなっているわけではないのに、反応できなくなっている状態です。
こうした状態では、修正型電気けいれん療法などの強力な治療が必要となりますが、制止はエネルギーの節約でもあります。十分な抗うつ薬を使いながらも、時間をかけてエネルギーをためていくことが必要となります。
精神運動性の焦燥は不安と密接に絡んでいます。落ち着かず、部屋の中を歩き回ったり、電話をかけまくったりすることになります。「うつ」と「不安」はベクトルを異にするものですが(3年近く前にNo.010で書きましたね)、「うつ病」の症状の中では不安も大切な症状となります。
焦燥にせよ制止にせよ、直接的な生活への支障という意味ではうつ病の9つの症状の中でも大きなものです。こうした症状が出ている間は十分な休養が必要です。また、うつ病の症状ですから抗うつ薬が治療の中心となりますが、焦燥が強い間は一時的に抗不安薬や抗精神病薬を使うこともあります。
さて、うつの話が続いていますのでここらで元気の出る一曲。この曲にしびれるようなら、私と同じか上の世代ですね(笑)。

コメント

  1. 隊長 より:

    発症したころを思い出しました。 正にこの状態。
    3か月で職場復帰したのは焦燥感と期待に応えなきゃみたいなのがありました。
    18年前にこのコラム読めてたらなぁ。
    さて、3月で「AKR47」歳ですが、『プロ野球ニュース』は佐々木信也さんの時代から見てましたよ~!
    この曲はホント懐かしいですが、ラスト、今年は同じことが起こりそうです! あの時は高校3年でした。
    当時のルーキー和田選手の思い出のユニホーム復活で、リーグ・CS・シリーズ制覇といきますか!
    思えば日本一になった11/2はニュース梯子して、興奮状態で寝られず、翌日の模試で数学が30点でした。
    本番の共通一次では200点取りましたけど。
    あ、パパゲーナさん、3/21のミューザ川崎で横浜市鶴見区の団体のマンドリンコンサートありますよ。

  2. パパゲーナ より:

    院長先生、こんにちは(^^)
    昏迷以外は、ワタクシもほぼほぼ身をもって症状を経験いたしましたぁ。イタタッヽ(´o`;
    時間はかかりましたが、柏先生から頂戴した回復への指針の数々、精神保健福祉士の方々からのアドレスなどを生活の中心に据えて、今は大幅に回復することができ、社会復帰することもできました。
    しかし回復を阻む大きな力は、ワタクシの事を一番心配しているはずの家族。この病気に対する無理解でしたか。柏先生にワタクシの家族宛にハヤテのような速さで理解を求めるお手紙を書いて頂いたりとお力添え頂いたこと、決して忘れることはありません(T_T)
    隊長さま、マンドリンの演奏会の情報ありがとうございます♪(´ε` )鶴見も川崎も生活圏です。発病後、初めてのコンサート鑑賞になると嬉しいデス

  3. 横浜院長 より:

    隊長さん
    85年を選んだのは失敗でしたねー(汗)
    私はベイスターズ押しですが、黒田の男気を見てしまうと、今年はカープに優勝させてあげたい気持ちになりますね−。
    パパゲーナさん
    コンサート、行けるといいですね。楽しめますように(^_^)

  4. パンダマン3世 より:

    ご無沙汰してます。
    心に余裕(ゆとり)がないなぁ、と感じると、うつ状態に近くなるのかもしれないと感じることがあります。仕事がたまって身動きできないときとか、公私ともにバタバタしてしまって、先が見えにくくなっているときとか。。
    でも不思議なのは好きなことをしていたり、大好きなメンバーと一緒だと、たとえ物理的にバタバタしてても、苦痛を感じませんね。年度末は毎年業務もたて込んでくる時期で、いつも慌ただしいのですが、「来年度はこうしよう」とか、「新しい体制でこんなことやってみよう」と見通しながらこの時期は過ごすようにしております。
    さて85年の虎旋風、すごかったですね。当時の職場にも熱狂的な虎ファンがいて、優勝した日は一晩で10万円(!?)使ったとか・・うらやましい話ですなあ。

  5. 横浜院長 より:

    パンダマン3世さん
    そうですよね。同じ「忙しい」でも、好きなことだったり、好きなメンバーと一緒であれば捉え方が全然違いますよね。その意味で、どんなことであっても、楽しみを見つけ出す力も必要なんだと思いますね。

  6. まねきねこ より:

    パパゲーナさん同様、私の母親は一番心配していて力になろうとしているのに病気に対する理解がないと言うか、理解しようとしませんでした。主治医からも説得してもらったのですが頑固と言うか何なのか、もう、私は母親に理解してもらうことをあきらめました。どうせもうすぐあの世に行く歳だし。それにしても精神病患者から見放される家族ってのも噴飯ものです。
     で、先週の「嵐にしやがれ!」で快傑ズバットが紹介されていました。及川光博さんはガンダムオタクでそっちもかなり笑えましたが、特撮プリンス宮内洋さんにあこがれて役者を志したと言っていました。快傑ズバット、BSあたりで再放送してもらいたいですね。あんなにブッ飛んだヒーローだとは想定外でした。笑い過ぎてお腹が筋肉痛です。

  7. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    うわー、嵐にしやがれ!見たかったです。残念。