横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.087 教えない

レインボーライン、烈車降りる時にもパス必要にしないと絶対また乗れない人が出ますねぇ・・・と、またまたほとんどの人にはイミフの一文からはじまるわがブログにようこそ。横浜院長の柏です。双極性障害に続きうつ病の連載をはじめたいなと思っているのですが、毎週ネタが沸いてきてしまうのでいつになってもはじまりませんね(汗)。

hitori87-a.jpg週末、とある精神科医の集まりで、芸人・松本ハウスのコント&お話に接する機会がありました。松本ハウスは、コンビの一人、ハウス加賀谷が現役の統合失調症通院患者であることをカミングアウトしています。テレビで活躍していたものの、怠薬から幻覚・妄想など精神病症状が悪化し7ヶ月入院、芸能界から退いたが10年後に復活。今や統合失調症の症状を逆にネタにしてしまう、というすごいコンビです。実体験に基づく提言は重みがありました。相方・松本キックやご家族が、病気を特別視せず普通に接していたことも大切なポイントでしたが、私が一番唸ったのは、回復期に入り、もう一度芸人をやりたい、というハウス加賀谷の強い思いから復活を目指す間について、治療者には余計なことはしてほしくない(表現は正確でないかも)、とのコメントがあったところでした。ぐぐーっとのびそうな時があって、そういう時は自由にのびさせて欲しい、そっとしておいてほしい、そんなお話でした。
病気の急性期、本人の小舟が嵐の中で翻弄されている時には、治療者は船を出し、まずは小舟を嵐の海から引き上げる作業を行います。しかし、回復期(安定期)に入り、嵐が止んできたらもう一度小舟を海に下ろし、自力でこぎ出すのを見届けなくてはなりません。実はここがなかなか難しいところで、嵐が本当に去ったのか、雲行きの見極めが困難な場合がしばしばあります。あまりに早く手放すと再び遭難してしまうが、といっていつまでも保護してしまうと、自力で立ち上がる力を逆に奪ってしまうこともある。急性期治療よりも回復期治療の難しいところがここにあります。薬物療法のみならず、医療機関ではデイケア、リワーク、町に出れば就労移行支援事業所、各種支援機関など、最近では様々な手厚い社会復帰の方法論が登場しています。でもやはり、最後に立ち上がるのはご本人。我々は、ご本人の立ち上がる力を奪うことなく、独り立ちを援助していかなくてはなりません。ハウス加賀谷は「感情が解き放たれていく」と表現していますが、こうした回復期のシグナルを見落とさず、しかし再発・再燃には細心の注意を払いながら、一歩後ろに退いて(いつでも支えられる位置にいて)回復を見守る。難しい作業ではありますが、うまくはまると一歩後ろから見ている私達も一緒に感動を味わうことができます。精神科治療者の一番の醍醐味はここにあると思います。
そんなことを考えていた日曜夜、テレビの全力教室に宮本算数教室の宮本哲也先生が出ておりました。中学受験のカリスマですね。先着順で生徒を募集して、8割を難関校に入れてしまう。そんな彼のモットーは「教えない」。20人の授業でひたすら問題を出し、手を上げた子に○かボツかしか言わない。自分から伸びようとしている子どもに下手に教えてはいけない。先回りして答えを教えてしまうのでは子どもは伸びないし、伸びる感動も味わえません。皆さんも、ちょっと難しい算数の問題を一生懸命考えて解けた時の快感、覚えていませんか。この積み重ねが、もっと勉強したいとなりますね。病気も同じで、少しよくなってくる実感がつかめると、もっとよくなりたいという気持ちと、もっとよくなるんじゃないかという期待からさらによくなるという好循環(positive feedback)が生まれます。この循環に入れさえすれば、あとは一人でもよくなる。治療者が余計なことをしなければ、ですね。
宮本先生は、ゆとり教育を一番下の子のそのまた下に目標を置くやり方なので誰も伸びない、とバッサリ。ゆとり教育亡国論(No.079参照)の私は全く同感です。宮本算数教室は、一番上の子のちょっと上に目標を置くことで全員を伸ばす。「伸びる力」のメカニズムを考えればきわめて妥当です。もちろん、一般教育の場でやる時は落ちこぼれ対策(それぞれの子が、実力のちょっと上を目指せるような方法論)も必要ですが。
算数の問題と言えば、電車で見かけた塾の広告にあった、1158を使って10を作る(+-x÷のみで)という問題、一ヶ月以上たつけどまだ解けない・・・。あ、教えないで下さいよ。意地でも自力で解いて快感を得るのだ(^_^;
次回、今日のテーマをもうちょっと掘り下げてみます。

コメント

  1. むぎママ より:

    冒頭の一文、先生の趣味嗜好からしてアレのことだとすぐ分かりましたよ。私は子供の世話に追われてまだ1回も観ることできてないのですが(汗)
    それにしても松本ハウスさんをお目にかかる機会があったとは、ボキャブラ出演時代から好きな私としては羨ましい限りです。
    加賀屋さんの「感情が解き放たれていく」という感覚、なんとなく分かるような気がします。
    また大なり小なりアップダウンがあることは間違いないだろうと思いつつも比較的今までのことを踏まえて考えると長いスパンで安定した状態が保てている現在とても共感できる話です、なので余計直接お話を伺った先生羨ましい限りです、ハンカチ噛んでキィィィィ!!ってやりたいくらい・・・しませんが。
    あと先生も全力教室ご覧になっていたんですね。私もゆとり教育は子供の本来伸びしろがあったであろう芽を剪んでしまう、逆に長いスパンで見たらそんな教育を受けた人間の人生のゆとりをガシガシ削りかねない策だと前々から思っていたので、宮本先生のスタンスや教育法は概ね同感しながら観ていました。唯一引っ掛かりががあるとしたら、やはり学習障害などの先天的ハンデが有る子には別途配慮が必要だろうけどなーってところくらいでしょうか。
    ちなみにあの放送日以来、夫婦揃って宮本先生考案のパズルを時間があるときにやっています。ハマりました、あれで子供の考える力が伸びるのも頷ける気がしました。
    あと先程から主人も1158で10にする計算一生懸命やっていますがやはりなかなか解けないようです。
    私は色々総当りで計算していたら答え見つけてしまいました、ただ運が良かっただけだと思うのですけどわかるとやはり嬉しいものですね!

  2. 横浜院長 より:

    むぎママさん
    あちゃー解けましたか。私はまだでございます。
    かつて数学だけで大学うかった私ですが、最近アタマがかたくてダメですね。
    宮本パズル、わが家もかつてDSではまりました。私は中級以上になると全然できません。
    お笑いお詳しそうですね。私はザ・ぼんちより後は全然わかりません・・・。
    松本ハウスも今回はじめて存在を知りまして・・・。

  3. まねきねこ より:

    レインボーライン?特撮ですか?トッキュウジャーって、トレインジャーと命名しなかったところがミソですね。宮崎監督の「風立ちぬ」はアカデミー賞を逃しましたが、零戦では無理だと思っていました。トッキュウつながりで新幹線の開発物語(プロジェクトX!)だったら可能性も!?と思うのですが、宮崎監督は飛行機が好きですから。賞はどうでもよかったみたいですけど本音は・・・。
     STAP細胞は結果としてフライングで終わったみたいですが、諦めないで欲しいと思います。
     統合失調症のお笑い芸人ですか。お笑いは脳に良いですよね。加賀谷さんにしても、ソチオリンピック、パラリンピックでも、諦めない心の尊さを教えてもらいました。
     1158ですか・・・解けたなんて、むぎママさんすごい!私は初めからあきらめ、宝くじのナンバーズでこの数字を使おうかと考えています。宝くじ、3000円分買って1500円当たったのが最高額でした。一瞬、得した気分になっちゃいましたよ、ほんとに(爆笑)。

  4. 隊長 より:

    加賀谷くんのあの明るさがニセモノだったとは思えません。
    サービス精神の賜物だと思っております。
    コンビが解散しなかったのもいいことだと思いました。
    算数パズル、まだ解けないです。

  5. 匿名 より:

    先生、「落ちこぼれ」という言葉を使わないでください。
    頑張ってもどうしても「出来ない」で辛い思いをしている人間は、沢山いるのですから。

  6. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    ははは、1500円当たったら私も得した気分になりそう。1158のナンバーズ、当たるといいですね。

  7. 横浜院長 より:

    Anonymousさん
    言葉は難しいですね。どこまでが許容範囲なのか、このあたりは個人差があるように感じます。いずれにしても、お気を悪くされたのであれば謝罪いたします。ごめんなさい。

  8. 匿名 より:

    先生を困らせるつもりはなかったんです。こちらこそ、変な書き方で嫌な思いをさせてしまって、ゴメンナサイ。

  9. まねきねこ より:

    「落ちこぼれ」と言う言葉については、30年以上前、私がまだ高校生か大学生のころ、使うべきではないという意見が多かったのを覚えています。Anonymousさんの
    書き込みを見て、思い出しました。