横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.076 非定型抗精神病薬 その2

横浜院長の柏です。脱線続きでなかなか話が進みませんが(^_^;ようやく非定型抗精神病薬(Atypical Antipsychotics; AAP)今日は各論です。前回お話ししました通り、AAPはマルチな作用を持つマルチなお薬でして(マルチといってもミラーマンに出てきた怪獣ではありません)、いろいろな精神疾患で幅広く使われますが、今日は双極性障害をメインにご紹介します。カッコ内が商品名です。
1. オランザピン(ジプレキサ)
1996年発売。当初は統合失調症が唯一の適応でしたが、私の経験でも、それまであらゆる治療でも陰性症状が目立ち、「枯れた」ような印象を与える患者さんが生き生きとした表情を取り戻すのを目の当たりにして、すごい薬が現れたものだと驚嘆したものでした。それまで、陰性症状には薬物療法は効果が乏しく、精神科リハビリテーションが唯一の治療法、という常識を覆すできごとでした。双極性障害の治療でも、当たればうつ状態をむくむくっと元気にするポテンシャルのある薬です。躁状態にも有効な優れた薬ですが、代謝系の副作用に注意が必要です。
2. アリピプラゾール(エビリファイ)
2006年発売。Made in Japan、国内開発されたお薬であることはポイント高いですね。分類上AAPに含めていますが、ドーパミンパーシャルアゴニストという特殊な性質をもつお薬です。詳細は専門的になるのでやめますが、大まかに言うとドーパミンが少ないときはドーパミンを増やし、多いときは減らすという特性があります。ドーパミンスタビライザー(ドーパミンを安定させる薬)という呼び方もされるようですね。使い方としては、少量ではドーパミンを持ち上げるのでうつ状態、とくに意欲や活動の改善が期待されます。双極性障害に限らず、うつ病にも利用価値が高いお薬です。大量では逆に躁状態を抑える効果が期待されます。
3. セロクエル(クエチアピン)
2001年発売。保険適応は統合失調症のみです。統合失調症に関しては、オランザピンに似ているがよりマイルドなお薬、という印象です。しかし、これは保険適応外ですが、うつ状態が遷延する双極性障害や、過眠の目立つ非定型うつ病の方の一部に著効例があります。長らくうつの続いた双極性障害の方が、セロクエル眠前200mgの単剤投与だけで劇的によくなった例もあります。
番外編 ゾテピン(ロドピン)
1982年発売。私が医者になるより前ですねぇ。何でこの薬がここに?とお思いでしょうが、実はこの薬、セロトニン受容体への作用も強く、AAPと呼んでもよい特性を持っています。発売国が限られている(アメリカで売られていない!)ために論文も少なく、世界的にはマイナーなお薬なのですが、私的には躁状態に対しては今でもこれが切り札です。AAPにしてはうつ状態への効果は期待できないですが、躁状態に対しては強力な鎮静化作用を持ちます。鎮静化と言ってもセレネースみたいにべたっと押さえ込むのではなくて、躁症状を特異的に抑えてくれるような、独特の味わいがあります。最近は躁状態にはジプレキサやエビリファイの高用量が第一選択みたいに言われますが、このお薬も再発見されてもよいものと思います。薬価も安く、またジェネリックもあるのでもっと安くもできますしね。
AAPには他にペロスピロン(ルーラン)、ブロナンセリン(ロナセン)などがありますが、私自身双極性障害への経験はまだ少ないので省かせていただきますね。
4月から気分障害のお話に入り、7月からその中で双極性障害編に入っておりますが、ごゆっくりすぎですねぇ・・・。年内には何とか完結させたいものです(>_<)。

コメント

  1. 隊長 より:

    浮かれまくっているので、今回の薬を処方してもらいたいな、と思いました。
    最近のが多いんですね。

  2. ツツジ より:

    はじめてのコメント書かせてもらいます。
    私は、ツツジといいます。
    前回のことで、気になることがあり、書かせてもらいます。
    私は、社会不安障害とゆうしんだんをうけました。
    自分では、まだ病気のことを受けていれていません。
    私は、いまだに、担当の先生の顔もあんまりみていません。
    担当の先生が、嫌いとかではありません。
    私は、中学の時に担任の先生からのいじめを受けて、それいこう、
    先生とゆう言葉で、不安を覚えてしまいました。
    どこで、私のことをいじめているんではないのかとすごく不安をしています。
    これは、いっしゅのトラウマですかぁ?
    トラウマは治りますかぁ?

  3. 横浜院長 より:

    ツツジさん(ここでは皆様「さん」付けで対応させていただいております)
    コメントありがとうございます。
    社会不安障害にしても、パニック障害にしても、不安障害は何らかのトラウマと関連していることが多いですね。しかし、PTSDとは違い、これらの病気の場合薬物療法だけでもかなりの改善率があり、そういえば最近あまり気にならないなぁ、となるものですよ。
    病気のことは早く受け入れられるようになるといいですね。治療の出発点は、ご自身が何か普通と違う、自力ではそこから抜け出せない、ということに気づくことです。顔は今は見られなくてもいいんです。社会不安障害の方の場合、治療当初はずっと下を向いていたり、帽子を目深にかぶったりされているものです。そのうちに顔が上がってくると思います。その頃には、ずっとよくなっていると思いますよ。