横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.061 レッツ・サーフィン!

横浜院長の柏です。タイトルを見てレッツ・モーフィン、に見えた方はゴーバスターズ病です、ってもう古いですね(^_^; さて、レッツ・サーフィン、と言っても私はサーフィンはできません。かつて従兄弟に乗せられたウインドサーフィンで、乗れたはいいけど気がついたら沖にいたトラウマがあるのです(^_^;今日はサーフィンはサーフィンでも、双極性障害の「波乗り」についてお話ししようと思います。ここは、しばらく続く双極性障害シリーズの核心部分になりますよ。
ちょうど一年前に、No.016にて病気の成り立ちについて説明しました。脳の状態には不安定な平衡状態と安定した平衡状態とがあります。双極性障害について見ると、これは波が大きくゆれている状態と、さざ波でおさまっている状態とになります。波があるのは仕方がない。これは体質ですから。この波を、いかにさざ波で抑えるか、ここが双極性障害の方の治療の、いや治療のみならず処世術のポイントになるのです。
この「波乗り」に関して示唆に富んでいるのが、神田橋條治先生の講演記録です。神田橋先生はもうご高齢ですが、卓越した観察眼を持つ、私の尊敬する臨床医の一人です。この講演記録は2005年に臨床精神医学という雑誌に掲載され、当時大学病院にいた私は深い感銘を持って読んだものでした。ほぼ同内容のものが捨てネコさんという方のブログに掲載されていますので、そこからポイントを引用させていただきましょう。
「もともと気分屋で、気分本位にふわふわ、ひょこひょこ、いろいろとするように生まれついている脳で、波がもともとある。それがある狭いところに閉じこめられると、もともとある波が大きくなってきて、生活に支障があるほどになると、病気ということになると考えると大体、病歴と合います。生活を狭める、注意を狭める、興味野を狭める。そうすると、もともとあった波が大きくなってきます。」
その人にあった生き方にできるだけ沿って生きる。いずれ書きますが(何年後だ?)、統合失調症の方でも生活の枠を広げることを好む能動型、一定の枠に安住する受動型に別れるというのが生活臨床という学派の考え方です。気分障害においても、bipolarityの高い方は枠にとらわれない自由な生き方を望み、低い方(メランコリー型のうつ病の方など)はある程度の枠の中で安定した力を発揮するのでしょう。
「気分屋的に生きれば、気分は安定する」
治療者はとかく、波を小さくしようと頑張ってしまうのですが、この言葉は常に肝に念じておかないといけない言葉だと思います。
しかし、高度にシステム化された現代社会において「気分屋的に生きる」ことは簡単なことではありません。双極性障害の治療とは、そこをお手伝いすることなんだと思います。次回以降、私なりに考えるエッセンスについてお話しします。
hitori61-a.jpgP.S.
ビンテージユニホームシリーズのホークス、
懐かしい!

コメント

  1. 隊長 より:

    独り暮らしになってから、気分屋だな、と思う生活です。
    いいかげん、アベノミクスの恩恵受けて、45歳でも就職したいぞ!
    興味深い話になってきました。
    サーフィンは、悪くないのかな。 と思いました。
    更に次回以降が楽しみです。

  2. まねきねこ より:

    先生が、サーフィンなさるのかと思いました(笑)。なにしろ引き出しの多い柏先生ですから。ウインドサーフィンか~80年代、懐かしいですねえ~。
     心の波もサーフィンですか。東日本大震災の年は、私の脳の中にも津波が来まして、「被災」しました。イライラと怒りの「余震」。それから「復興」の日々。心の津波はどうやって「高台に避難」すればいいのか、考えてしまいますね。とりあえず頓服飲んで一休みかなあ~とか。

  3. 横浜院長 より:

    なかなかお返事できずすみません(>_<)
    隊長さん
    アベノミクス、皆さんに効いていますが効果はまだまだのようですね。でもオリンピックも来ますし、日本の底力を皆で出しましょう。
    まねきねこさん
    心の津波から「高台に避難」いい言葉ですね。避難のお手伝いのやり方を、もっともっと考えて行かないとですね。