横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.054 双極スペクトラム その1

横浜院長の柏です。私と同い年の円谷プロも今年50周年。記念にこちらの動画はいかがですか。ウルトラセブン。日本の特撮史上最高傑作ですね。この造形美、カメラワーク、カッコ良さたるや、その後半世紀近く経ってもこれを凌ぐ作品は現れておりません。バックの”ULTRA SEVEN”の曲も最高ですね♪
さて、前回予告した双極スペクトラムについてです。気分障害は、単極性と双極性に分けられ、「うつ」だけを呈する単極性気分障害(=うつ病)と、「躁」と「うつ」を呈する双極性気分障害(=双極性障害)がある、というのが精神科の教科書の記載です。「極」が一つか二つかですね。
このような単純な二分法に疑問を呈したのが双極スペクトラムの考え方であり、代表的な研究者がアキスカル(Akiskal)とガミー(Ghaemi)です。
アキスカルは、前回お話しした双極Ⅰ型、Ⅱ型障害についてより細かい分析を行い、またそれ以外の混合性気分障害も含めて、下記のような大胆な類型化を行いました。

Ⅰ型:躁病
Ⅰ1/2型:遷延する軽躁病をともなううつ病
Ⅱ型:軽躁病エピソードをともなううつ病
Ⅱ1/2型:気分循環症
Ⅲ型:抗うつ薬による軽躁病
Ⅲ1/2型:物質使用による軽躁病および(または)うつ病
Ⅳ型:高揚気質と関連したうつ病
Ⅴ型:不機嫌型軽躁病と関連した反復性うつ病
Ⅵ型:認知症様症候群に進行する、気分の混合性の特徴を有する遅発性うつ病

気分循環症とは、躁〜うつまで達しない気分変動を繰り返すケースで、時々この診断をつける方に出会います。抗うつ薬による躁転、あるいはアクティベーションと呼ばれる行動・情動の変化については、これを単純に薬の副作用とするのか、もともと双極性障害の素質のある方がなるのか、まだ議論のあるところです。アキスカルはこれをⅢ型およびⅢ1/2型の双極性障害と位置づけ、DSM-5でも「物質あるいは医薬誘発性双極性障害および関連障害」という項目が「双極性障害および関連障害」の中に置かれ、DSM-Ⅳ-TRの時よりも双極性障害の一種としての位置づけを明らかにしているようです。

このⅢ型までの位置づけは私も大変よくわかるし合理的だと思うのですが、その後アキスカルはさらにどんどん分類を増やしています。Ⅳ型あたりまではまだ了解可能ですが、Ⅴ型、Ⅵ型となるとわざわざ定義する意味があるのか、ちょっと拡散しすぎているように感じます。
その点ガミーの双極スペクトラムの考え方の方が、一貫して理解できる美しさがあります。こちらは次回ご紹介しますね。

コメント

  1. 隊長 より:

    細かすぎてついていけないくなりそうです(苦笑)。
    抗うつ剤による躁というのはもしかしたら自分に当てはまっているのでは? と思いました。
    でも、これだけあると、あれもこれもとも思ってしまいます。
    15日のデイケアで、朝、落ち込むことがあり、午前中はふさぎこんでましたが、午後は自分の見せ場とばかりに躁状態でした。
    1日の短い時間のうちで両方現われ、振れ幅がメチャクチャな時間を過ごしました。
    こういう例も研究されてるのでしょうか?

  2. まねきねこ より:

    今回は、専門的な内容で科学的に説得力のあるお話でしたが、難しかったですね(笑)。しかし、当事者としてはとても興味深いお話でした。
     最近、日本の歴史は新しい文献の発見や発掘調査によって、私たちが習ったことと違う事実が出てきています。文学も人によって見方や感じ方が違うのは当然ですし、時代の思潮みたいなものに人の心は流されやすく、倫理感さえ変わります。私は文系でしたので、自分が勉強してきたことが、何だか虚しく感じるのです。それで、苦手だった数学を勉強しなおしてみたいと思うようになりました。数学や物理学の、一つの答えを出すために辿る思考のプロセスって、興味深いものがあります。医学も科学。理系の思考世界を経験したら、また少し自分の中で何かが変わったり進化しそうな気がします。

  3. 横浜院長 より:

    隊長さん
    落ち込むことがあってふさぎこむ、自分の見せ場でハイテンションになる・・・これは正常な気分の変動にも見えます。以前お話ししたウルトララピッドの可能性は否定できませんが、慎重な評価が必要です。主治医によくお尋ねくださいね。
    まねきねこさん
    最近ちょっと難しいですかね・・・。このブログは、患者さんを対象としつつも最新の医学まで取り込み、正しい知識をお伝えして今後の療養生活にお役立ていただくことを目標にしています。なるべくかみ砕いて書いていくつもりですが、わかりにくい点があればいつでもお尋ねくださいね。

  4. パパゲーナ より:

    院長先生、カッチョイイお宝映像のご紹介ありがとうございました♪私の記憶には残っていませんでしたが、やはり円谷プロ。。。こんなに精度の高い映像を当時すでに作り出していたのですネ。実相寺監督以下精鋭の集まる黄金期の作品。目の保養でした(^^)
    院長先生は、もちろんご存知とは拝察いたしますが、この夏、日本橋三越で“ウルトラセブン展”が華々しく開催されるようですね♪
    http://www.mitsukoshi.co.jp/store/1010/ultra/
    ウルトラ・デパートと銘打ってレアなグッズが目白押しのようですし、7月30日には子供用品売り場などを、セブンが終日パトロールするといいう、ココロあたたまる催し。。。もとい警備が行われる予定だそうです(^^)v
    “単極性”一筋だったワタクシも、以前、サインバルタ(名前がバルタン星人に似ていてキライて゜す。。)を上限まで飲んだ時、にわかに激しく“双極性”の世界(推察するにⅢ型?)に迷い込み終日呻吟・往生した経験は忘れられません。
    極が一つの私ですらマイっているわけで、極を二つ持つ患者さんはどんなにか疲弊してしまうのかと、ほんの少しそのお気持が分かったような気がしました。
    で、院長先生お聞きしたいんですが、【Ⅲ1/2型:物質使用による軽躁病および(または)うつ病】に分類されている、“物質使用”の“物質”とは具体的にどのような物があるのか例でお示しいただきたいのですが。どうぞよろしくお願いいたします。

  5. 横浜院長 より:

    パパゲーナさま
    ウルトラセブン展。存じ上げております。行きたい!が、時間が・・・(泣)。
    そして、品川プリンスホテルの某企画も、行きたい!う〜〜ん(泣)。
    患者さまでいつも「サインバルタン」とおっしゃる方がありまして、間違ってるよ〜と思いながらも、表現がかわいいのでつい私も「サインバルタン」で歩調を合わせております(^_^;
    バルタン星人お嫌いですか?診察室のパソコンの、私のログインアイコンはバルタン星人なのですが(^_^;

  6. パパゲーナ より:

    サインバルタン。。。かわいいですネ(^u^)クスクス。
    ワタクシ、バルタン星人は嫌いではありませんが、セミがあまり好きではないのと、バルタン星人が登場した回の衝撃が強烈でしたので。“つっ、強いぞ!バルタン星人。!!今までの怪獣とチョット強さが違う?”と子ども心に怖かった記憶が。。。何よりサインバルタ上限2錠服用で繰り広げられた“未知の世界”のショーゲキのためにダメになってしまいました(T.T)うぅぅ。。
    ええ。。いいクスリのようですネ、サインバルタン。ただ私の症状にフィットしなかっただけのようで。(単にワタクシがサインバルタンの幻惑作戦に堕ちやすい状態だったようでございます)