横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.046 気分変動

横浜院長の柏です。11日土曜日、当院の成人発達障害グループ、通称サタクラ第1期が最終回を迎えました。皆さん個性あふれる面々で、最後は皆さん別れを惜しまれ、こちらも胸を打たれる場面がありました。来月からは新しいグループ、メンバー一新にて再スタートです。
さて、気分障害の話に戻りましょう。No.043では落ち込みの「長さ」のお話をしましたが、今回と次回で気分の浮き沈みの「パターン」について書いてみます。
「浮き沈み」という言葉の示すとおり、気分には「浮いた」時と「沈んだ」時がありますね。一般的には「沈んだ」時が問題と思われるでしょうが、「浮いた」についても「浮きすぎる」と問題となるわけです。今日はこのあたりを図式化してご紹介しましょう。気分が浮く方向を上に(躁方向)、沈む方向(うつ方向)を下に、時間軸を横軸にとってグラフ化してみます。
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これが基本となるうつ病の経過図です。より細かく専門的に言うと、「単極性うつ病、単一エピソード」と言います。通常の気分から始まり、じわじわとうつ状態に至り、徐々に回復しています。もちろん、実際はこのように綺麗にはいかないわけですが、模式図としてお考え下さい。「単極性」というのは、躁方向がなくうつ方向のみ、という意味です。「単一エピソード」というのは、うつの経過が一回のみで回復しているという意味です。次はこの図をご覧下さい。
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今度はうつ方向に2回振れているのがお分かりいただけると思います。これが反復性うつ病の経過図です。専門的には「反復性うつ病エピソード」ですね。せっかくよくなったのに、再発してしまっています。こうしないために治療が必要なのです。
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次はこの図です。ちょっとわかりにくいでしょうか?上の図のようなしっかりしたうつには至っていない(破線までいかない)けれども、気分が少し下がった状態がずっと続いていますね。このように、うつ病エピソードの診断基準を満たさない程度の抑うつ状態がだらだらと続く(医学的定義は2年以上)状態を「気分変調症」と呼びます。
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ではこの図はどうでしょうか。上の2つの図をあわせたような形になっていますね。破線の経過をたどると反復性うつ病のパターンですが、この図の特徴は反復性うつ病なら正常気分に回復している「寛解期」において、気分が正常まで戻らず、気分変調症レベルでとどまってしまうことです。この図では最初にうつ病エピソードを呈していますが、実際には最初が気分変調症で始まり、途中でうつ病エピソードを繰り返す場合もあります。これらはいずれも、気分変調症の上にうつ病エピソードが乗っかった形をとっており、こうした病態を「二重うつ病 (double depression)」と呼んでいます。
次回は浮く方向(躁方向)が混ざるとどうなるか、に話を進めます。

コメント

  1. 隊長 より:

    上がっても上がりきらない状態が[二重うつ病」なんですね。
    ようやく理解しました。

  2. まねきねこ より:

    腹の虫の居所が悪い、という言い方がありますが、自分はまさに、落ち込んでいるというより、この、不機嫌っぽい感じがぴったりです。
     先生、寄生虫の博物館に行かれたんですね。現代人は寄生虫がいないからアレルギーになるという説もあるらしいのですが、寄生虫と同居はどうしてもいやざんす!O-157が流行ったころ、日本人は清潔すぎてウイルスに弱いといわれ、まあ、ウイルスなら、少々止むを得ないかなと思いました。まさか、うつ病も少しは寄生虫がいたほうが良いなんて説が出たら、いやですねえ。