横浜院長のひとりごと　No.039　三寒四温

横浜院長の柏です。今日は麻布で対人関係療法の勉強会でした。昼休みは暖かく、外人さん行き交う麻布十番の街を散策しましたが、帰りは強風もあり気温が急降下。メタボ対策で帰りは浜松町まで歩きましたが、大丈夫だろうと上着を持たずに出かけたため寒い思いをしました。明日も寒いようで、三寒四温のこの時期は体調を崩しやすい時期です。皆さんお気をつけ下さい。
三寒四温を広辞苑でひくと、「三日ほど寒い日が続いた後に四日ほどあたたかい日が続き、これを交互にくりかえす現象。中国北部・朝鮮などで冬季に見られる。〈季・冬〉」とあります。四寒三温でなく三寒四温というところがポイントですね。暖かい日の方が多い、だから気温は上がっていくけれども、まだまだ寒い日も間に入って来ます。さてこの四字熟語ですが、実は診察室で私がよく使う言葉でもあります。
うつ病が代表的ですが、精神科の病気はよくなる時には時間をかけてゆっくりとよくなっていきます。治療を始めて間もなく「先生、よくなりました！」とか言われてしまうと、実は私は不安になります。もちろん、明らかな心因があってそれが解消したような場合には、それで問題ないこともあります。しかし一般論としては、精神科の病気はゆっくり治れば治るほどあとの治りがいいと言えます。時間をかけてよくなった方が、一旦よくなればその後は再発しにくいということです。なかなかよくならないというそこのあなた、大丈夫ですよ。
このよくなるまでの過程が三寒四温です。冬が春に変わるのまでに寒い日がはさまってくるように、病気がよくなるときも一直線には行きません。三寒四温、よくなり悪くなりまたよくなる、という過程を繰り返し、全体としてはよい方向に向かってきます。これを図示するとこのようになります。この図では、横軸が時間、縦軸が気分を示し、下にいくほど症状（うつなど）が強いことを示します。しかしこの図は、あくまでもあとから振り返ってみてこうだという図であり、患者さんご本人はこのグラフ上を動いており、その時には全体は見えていません。四温、すなわち①のようによくなる方向へ動いている時はよいのですが、三寒、②のように一時的に悪くなる時が問題です。この時にはグラフの傾き、微分係数は負になっていますが、ご本人にすると②の矢印線のように、このまままたどんどん悪くなるのではないかという不安に襲われる場面です。こういう時こそ、病気の治療経過についての正しい知識がものを言います。これが三寒四温の三寒だとわかっていれば、あわてずにやり過ごすことができます。わからないと、焦って不安が募り、場合によっては再燃につながることもあり得ます。明けない夜はありません。あわてず騒がず、じっくりとやり過ごしましょうね。