横浜院長のひとりごと　No.025　発達障害あれこれ

横浜院長の柏です。今日は、午前中東京で大学の集まりがあり、藤山直樹先生の精神分析の話と、かつての師匠でもある加藤進昌先生の「大人の発達障害」の話を拝聴してきました。いずれも内容が濃く、充実した一日となりました。
最近、とにかく大人の発達障害にふれる機会の多いこと多いこと。私の新患枠は、再来に追われてかなり限られているのですが、「発達障害ではないか？」と受診希望される方でかなりの割合が埋まってきています。新聞やAERA、NHKなどで特集が組まれたり、世間の注目を集めてきていることも大きいでしょう。当院では横浜市発達障害者支援センターなどとの連携も進めており、各支援機関からの紹介も増えてきているのが現状です。発達障害診療を積極的に進めている診療機関が少ないことも、一因としてありそうです。
こうした現状をふまえ、ここだけの話ですが(^_^; 当院ではこの12月から成人発達障害の方のための精神科ショートケア「サタデークラブ」を開始します。月に一度午前中に3時間、全6回のプログラムです。先行施設の見学を踏まえ、当院なりの工夫をこらしたプログラムにしていきたいと思っています。実は、明らかに需要>>供給のバランスが見えていたことから、今回のサタデークラブにつきましてはホームページでは告示せず、院内掲示および診察室での説明のみでの募集とさせていただき、それでもすでに短時間で定員に達してしまいました。
ニーズの高さを再認識し、初回を充実したプログラムにするとともに、今後より多くの方に対応できるような院内体制の整備が必要かと思っております。
加藤先生のお話では、かつては大人の発達障害は見落としが問題であったが、今はむしろ過剰診断が問題になっているとのことでした。月に一度の予約電話がつながる頃には満員になっており、プラチナチケットと噂の加藤先生の専門外来でも、初診のうち発達障害の診断がつくのは半分だとか。大人になってはじめて発達障害になることはなく、必ず小さい頃から何らかの発達特性の問題を抱えている、そこを疎かにして診断を下してはいけない、当たり前のことですが改めて肝に銘じたいことです。
もう一つ、加藤先生のお話でうーんと思わされたこと。発達障害というのは自閉症スペクトラムとも言われるように連続性をもって幅がひろい概念です。ここでよく、障害（病気）なのか個性なのか、ということが問われます。私はこれまで、「個性として見れば個性、病気として見れば病気」という説明をしてきたのですが、加藤先生は「目が見えないのを個性とは呼ばないですよね」と話されるそうです。それくらいの厳しさをもって、病気として責任をもって引き受けるのが治療者の責務である、と痛感しました。
さて、明日(11/5)は横浜市発達障害検討委員会です。こうして発達障害と関わる毎日が続きます。このため明日午前は休診です。ご迷惑をおかけいたします。
ところで今日は上記講演のあととんぼ返り、みなとみらいホールで都響のマーラーツィクルスでした。ブラボー！
考えてみると、横浜で、日本のオケで、インバルが聴けるというのは奇跡的ですね。そのうちマーラー、ブルックナー談義もやりますかね。止まらなくなりますが。。。ではまた。