精神療法には、様々な立場とそれを基礎にした方法とがあります。
説得や暗示を与える方法を避けて、患者様自身の選択を尊重して治療しようとするが、アメリカの心理学者ロジャーズの提唱によってなされたカウンセリングあるいは治療法であります。初期の1940年に非指示的な治療と呼ばれたのは、積極的に指示を与えない方法であるためであります。この背景には、来談者のなかに潜む成長力、回復力を温かく見守ろうとする理念があります。しかし、この概念はあたかもこの治療法を消極的・受け身的であると印象を与えるところから、来談者中心カウンセリングという呼び名に変えられました。
1950年代の後半頃までに、技法よりカウンセラーの人間的な態度を重視するようになりました。また、独自のパーソナリティ理論も確立し、実証的な数々の研究が報告されてきました。1960年代の後半までにかけては、ウィスコンシン・プロジェクトにおいて統合失調症患者への適応が試みられ、カウンセラーの純粋性などが問題とされました。さらに、この頃にロジャーズの共同研究者であるジェンドリンによって、体験過程の概念が提唱され、実存的な立場に接近していきました。