人間の社会生活の基礎的拠点として、家族やそれに類似する集団的単位は、いずれの社会においても見出すことができます。
家族を定義することや、他の社会組織と区別し、同性、婚姻・生殖性、親族単位性、結合の情緒性あるいは規範性、社会的機能の多様性、所属の選択(任意)性あるいは非選択性などがあげられます。しかしながら、家族という社会事象の複雑さのためにこれらの要件のうちのいくつかを組み合わせて明確に概念定義をするとしても、必ずしも現実態のすべてをすくい取り入れるとはいえない困難さがあります。
日本における最も代表的な定義は、「家族とは、夫婦・親子・きょうだいなど少数の近親者を主要な成員とし、成員相互の深い感情的かかわりで結ばれた、幸福追求の集団である」とする森岡直美のものがあります。しかしこれについても、その基盤として核家族論に対する批判を含め、集団論的なとらえ方の不十分さや限界を指摘する見解も散見されます。
また、研究史からみると、家族はまず、制度上の問題として論じられ、その後、集団としての有り様に注目して、その生活構造や人間関係をとらえて研究され、関連する知見が蓄積されてきた経緯があります。そして今日では「個人化」と呼ばれる家族の変化にも対応して、さらに、その内部の二者関係や個人レベルで家族事象をとらえる研究への関心が高まりつつあります。他方、社会保障政策などとの関連で、制度としての家族についても、新たな視点からの検討が求められています。