自分の手で故意に行われ、死に至ることがなく、社会的に認められない、身体を害する行為を自傷行為と呼びます。
自傷行為という言葉は範囲が広く、爪噛みやピアスなどよく見られるものから始まって、より重大なものまで様々です。死に至ることがない、というのはたまたまそうだっただけで、自殺企図がある場合も含みますし、自傷を繰り返すことで実際に死んでしまう場合もあります
なぜリストカットをするのかは人によって全く異なり、場合によっては正反対の理由で行う方もいます。例えば、現実感を取り戻そうとして行う方もいれば、逆に現実から離れるために行う方もいます。あるいは他の人に自分の辛さをわかってほしいために行う方もいれば、逆に自分だけの秘密を持つために行う方もいます。死にたいと思って行う方もいれば、生きるために行う方もいます。他にも意識をトランス状態に変化させるためだったり、疎外感や空虚感から抜け出るためだったり、自分がバラバラになっている感じをつなぎとめるためだったり、コントロールできないような感情を抑えるためだったりします。また、外傷体験を受けている方は、その外傷を「自分が悪いからだ」と感じて自分を責めるためだったり、その外傷的な場面を自分で能動的に繰り返すことで乗り越えようとする努力の表れであったりする場合もあります。
こうした様々な背景を持つリストカットですが、一つの共通する特徴があります。それは「他の方法では自己表現をすることが難しい」ということです。そのため、治療では、自傷行為以外の方法で自己表現ができるようにしていくことが、もっとも一般的です。