保健所は地域精神保健福祉業務の中心的に行政機関として業務を行っています。関係諸機関および当事者団体、事務所、教育機関等を含めた地域社会との緊密な連絡協調のもとに、入院中心のケアから地域社会でのケアへの転換を目指して、精神障害者の早期治療の促進を図るとともに、地域住民の精神的健康の保持増進を図るための諸活動を行います。
地域に関わるネットワークおよび情報の拠点として、地域精神保健福祉に関する企画立案の機能や、保健所保健福祉サービス調整推進会議等を通じての関係機関の連絡調整、指導、援助の役割を強化する必要があります。また、近年自殺の増加や他者に危害を加える事例が社会問題化しており、こうした精神的、心理的問題を背景にもつ者に適切に対応する「心の健康づくり対策」等、保健所の行う地域精神福祉業務の役割はますます重要になっています。
1999(平成11)年の精神保健福祉法の改正により、「緊急に入院を必要とするにもかかわらず、精神障害のため同意に基づいた入院を行う状態にないと判定された精神障害者を都道府県知事の責任により適切な病院に移送する」移送制度の創設や、精神科病院・精神障害者社会復帰施設に対する指導監督の強化等の改正が行われ、保健所の積極的な関わりが期待されています。
精神障害者に対する福祉サービスについては、他の2障害(身体障害・知的障害)に比べて整備が遅れており、障害者自立支援法の執行を機に、サービスの充実がこれまで以上に求められています。保健所はこれまで家族会、患者会の育成や小規模作業所および精神障害者地域生活支援センターの整備に中心的な役割を果たしてきましたが、施行後も広域的なサービス実施体制の評価を行い、市町村やサービス事業者等関係者とともにサービス実施体制の整備を進めて行く必要があります。サービス実施主体が市町村になったことから、市町村が地域生活支援事業を円滑に実施できるよう保健所の積極的な支援が求められています。また、精神障害者およびその家族の主体的な取り組みが重要ですが、精神障害者の障害福祉サービスのニーズは潜在化していることから、保健所は精神障害者のニーズを引き出すことにより、サービスの充実につなげていく役割があります。
主な業務
企画調整・普及啓発・研修・組織育成・相談・訪問指導・ケース記録の管理および記録の保持など・社会復帰および自立と社会参加への支援・入院および通院医療関係事務・市町村への協力および連携。