福祉用語の基礎知識

モラトリアム

モラトリアムは、ラテン語の”mora”「遅延」”moran”「遅延する」から由来した、人間の発達を可能にする準備期間のことで、エリクソンが命名しました。青年が社会人としてのアイデンティティ(独自性・自己認識)を確立するための様々な役割を試み模索することを、社会は心理・社会猶予期間として認められていると考えました。
しかし、高学歴化が進み、静的に成熟しながらも親に経済的・精神的に依存する状態が長く続く現代の日本社会では、モラトリアムが本来の意味を失い、社会的責任回避の意味合いが強くなってきています。自意識過剰になり、社会人としての同一性選択を回避し、無気力になり、友人関係に不安を抱くなど、エリクソンが同一性拡散として記述した事柄は、長期化するモラトリアム社会の危険性を表していると言われています。
誰であっても、少し立ち止まって考える時間や寄り道する時間はあり、そのような時間があるからこそ後に、その方らしい生活や生き方ができるのだと思います。